▼さよならが君に届くまで 今日は珍しく深く寝付いてしまい、夢を見た。 17年掛け何千回と見続けて来た、5歳から7歳にかけての自分とある大切な人との思い出のような夢だ 夢の中の大切な人はいつでも笑っていたし、その夢を見終わった後のローは、どんな過酷な状況下に置かれていても、その人の笑顔を思い出して笑えることが出来た ドンキホーテ・ドフラミンゴの傘下から離脱し、自分の海賊団を持った自分は船長となった 昔のこじんまりとしていた自分からはとても想像がつかないことだ。大切な人から繰り返し言われた「お前は将来、大物になるよ。ロー」と言う言葉のままに動きたかったからかもしれない 自分の記憶力がよくて良かった。2年間のあの出来事を まだ1つも忘れていない 「キャプテン 針路はどうしますか?」 「…このままだ。たまには海をアテもなく彷徨うのもいいだろ」 「アイアイ!」 勝手気ままな命令を出されても、それを聞き入れるクルーたちは、自分には勿体無い人間ばかりだな。 ローは、甲板から海を眺め、自分の右手首を見下ろす。あれから色々あった。手酷く痛めつけられたことも、攫われそうになったことや、死を覚悟した瞬間など沢山ある。 だがその度に、ローは手首に巻いて大切にしてきた紺色のネクタイを見る 奪われそうになっても、破られそうになっても、無様な姿に晒されようとも守ってきた大切な人のモノだ。これが無ければ、今でもあの2年間は夢だったのではと疑っていたかもしれない。ネクタイは、ローに現実を突きつけると同時に、もう叶いそうもないあの人との再会を諦めさせてくる物でもあった 「………… ―― ……」 呟いた名前は、何度呼ぼうと色褪せることはない |