愛情構築 | ナノ
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▼21


やっぱり甘いものは好きになれない。でもトリトと一緒に食べる甘いものなら食す価値は十二分にある
そもそもはローの為にトリトが買ってきた1ホールケーキも、その5分の3はトリトの胃袋の中に消え、5分の1はローの胃袋に、残りの5分の1はラップをかけて冷蔵庫に保管ルートだ。おそらく明日の朝にローが朝食と共に食べることになるだろう。目の前で見せられたトリトの食いっぷりに、腹の辺りがモヤモヤしてきた。そうかこれが胃もたれか。また体験したことなかったことを体験できた



風呂も入り歯も磨いた。
後片付けに皿洗いをするトリトを手伝い、落ちかかる瞼をカッ!と開いては、うつらとするのを繰り返す。眠たそうにしているローをトリトが見つければ、優しく抱き上げてベッドにまで連れて行ってくれる。それがローの毎日の狙いだった



「こらロー 皿持ったままウトウトするな」
「んー……」
「しょうがないな…」



今日はいつもより眠たくなる時間が早いんだなロー
トリトの笑いを含んだ声が、耳元で心地好い
水で冷えた冷たい手で抱きかかえられ、ぐずる素振りを見せながらトリトの首に手を回す。温かい



「もう寝たか?」
「……まだ…寝てない」
「そうか じゃあまあ、夢現な感じでいいから聞いてくれ」
「…?」



今日はそのまま直ぐベッドに下ろされない。何故か抱き上げられたままの格好で、トリトは突っ立っている



「今日でお前と出会って2年、もう0時も回ってるから3年目に突入するワケだが」
「ちっとも、お前を元の家に帰してやる方法が分からない」
「多分もう暫くかは、まだオレのとこで世話になるしかないと思う」
「ローは、それでいいのか?」
「このまま帰れなくて、ズルズルとオレの所にいて、いいのか?」
「ああオレは大丈夫だ。全然気にするな。オレはローが好きだからな。お前の為になることなら、出来ることなら何だってやってやるさ」
「でもお前の気持ちだけは、オレにはどうしようも出来ないから」
「だからもし、オレのこと嫌だって思うんなら、遠慮なく言ってくれよ」
「な、ロー」





却下だ


トリトが今伝えてきたことの半分が却下である。誰がいつトリトが嫌だと言った。いや言っていない。言っていないからトリトは思い違いをしている。首にしがみつく腕の力を強くすれば、ローの体に回っているトリトの腕の力が強くなる



「嫌なわけない」

「! ロー」

「嫌じゃない。嫌ってるわけない。思い違いするな。おれはトリトに感謝してる。受け入れてくれたことも、育ててくれたことも、色んなことを教えてくれたことも、温かく接してくれたことも、こうやってだきしめてくれる事も、人間らしい感情を抱かせてくれたことも、オレの能力を理解して受け入れてくれたことも、全部感謝してるんだ」
「微塵も帰りたくないわけじゃない。だけどオレはトリトと一緒にいることの出来るこの世界がすきだ。きゅうくつで、空はせまいし、海はちいさいけど、それでも、大好きなトリトのいるこの場所がだいすきなんだ」



ああ、伝えるつもりのなかったことまで言ってしまっているような気がする。でももういい。寝ぼけてるんだ。夢現にいるから、言ってしまうんだ。そういうことにしよう。そう言うことなんだトリト。勘違いするなよ



「だから今さら、オレを棄てるなよ?」
「…ああ勿論だ。誰が棄てるもんか。ずっと、看てられる限りずっとローを見ててやるよ」
「………うん」



トリトの笑顔が間近で輝いていて恥ずかしい。上げていた顔をまたトリトの肩に押し付ければ、トリトは笑って強く抱きしめてくれた。




ああすき、大好きだ トリト