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▼19




「トリト」と、ローは2年前と比べて、とても穏やかにトリトの名前を呼ぶ


「どうした?ロー」と、トリトは2年前と比べて、優しい温かさを持った声音でローに声をかける



トリトがローと大人気なく口喧嘩したことはあっても、決して手は出さない。ぶっきら棒なりにトリトに愛されていたローの身体からは、いつしか生傷の痕は消え、子どもらしい丸みを帯びた体つきになった。背もほんの少し伸びた
いつも相手に威圧感を与えていたローの鋭い目も、その目に映る対象の大半がトリトになったことで、眦は幾分下に下がった。隣にトリトがいることによって安眠を得る事に成功したおかげで、隈も完全に薄れた
「動物愛護団体に怒られるからやめなさい」と言われ、大好きだった生物の解剖はとんとしていない。その代わりに、トリトが勉強を教えてくれる。トリトから教えられることを次々と吸収していったローはとても賢くなった。それにローが何かを学び覚えれば、トリトはローを褒めた。それがたまらなく嬉しかった




たかが2年、されど2年
いつしかローの中にあった、元の世界に帰らなければ、という気持ちはなくなっていた
方法は分からないし、何よりそうまでして帰りたいとは思わない
どう考えたって、今この世界でトリトといることの方が、余程楽しいのだ。トリトに伝えたことはないけれど、ローはそう思っている













TVから聞こえてくる雑多な音声をローは聞いていない。ただニヤっと笑い、ウズウズと時計を見ている。もうすぐトリトがバイトから帰ってくる時間だ。今日は、ローとトリトが会って2年の(トリト曰く)記念日。去年は祝えなかったから、今年は盛大に!と言ったトリトに期待をしない方が酷だろう
この2年で、すっかり夏の扇風機と 冬のコタツの虜になってしまったローは、
あったかいコタツの中に潜り込んで、まだかまだかとトリトを待つ。ローの表情筋は、どうやら少し緩くなったようだ









そしてトリトの表情筋はもっとユルユルになっていた
バイト代奮発して買った、1ホールのチョコレートケーキ
ローが甘いモノはあまり好まない事を考慮してビター強めでお願いしたモノだ
チョコプレートの上に「2nd Anniversary」と書いてもらったのはローの為だが、トリトの方が余程気を良くしている
とりあえず滑って転んでケーキを台無しにしないように、浮ついた足をしっかり地につけ家路を急ぐ。きっとローは、家の時計を見ながらニヤニヤして待っていることだ