▼08 「留守番できるか」 「なめんな」 「本当か。無理してないか」 「してない」 「心配すぎるが、オレはお前のその即答を信じるぞ」 「おう」 「家のチャイムが鳴っても出るなよ。物音も立てるなよ。出来るか」 「できる」 「オレ、今日はバイトもあるから、オレの帰りを待たずして腹が減ったら冷蔵庫の握り飯を食え。間違っても調理系は扱うな。怪我する」 「わかった」 「暇すぎてどうしようもなかったら寝てるか、TV見てるか、俺の部屋の本読んでていい。読めたらだけど」 「!本よんでいいのか」 「いいぞ。でも日本語だぞ、分かるのか?」 「…あ」 「……帰って来たら、文字の勉強教えてやる。じゃな、行ってくる」 「おー」 「………」 「……イッテラッシャイ」 「おう」 バタバタッ、ドンッ、ガチャン、カンカンカン…… ようやく静かになった。トリトはどうやらダイガクに行ったらしい この家にオレは1人。会って1日の子どもに自分の留守を任すとは。……まぁ任されてしまったものはしょうがない。しっかり留守を守ってやるとする 昨日トリトに買ってもらったこの黒のパーカーは着心地が良い あっちの世界でいつも着ていたボロボロのシャツなんかより何倍も良い素材を使ってるんだろう なのに「格安だ!!」とトリトは叫んでいた。この国は豊かなんだろう TVを付けてみるが、入ってくる音声は分かるものの、書かれている言葉はまるで意味が分からない。辛うじて英語は分かる トリトは、今日帰って来たら勉強を教えてくれると約束した 何かを学ぶ事は好きだ。自分のタメになる。しかも、誰かに勉強を教えてもらうのはあまりない体験だ。ローは今日の晩の約束を思っては、「へへっ」と笑った 「……はやく帰ってこい」 トリトが家を出て行ってからまだ、5分だった |