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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ 指を折って数えた慈しみにおまえがいるのは知っていた

エースの身体に"影"がないことに気付いてからは、抱きつかれているこの当人の身体が異様に冷たく感じられてきた。腕を回しているこの背中も、足に絡み付いてきているこの足も、肩に乗せられたこの顔も、全部が幻のよう
急速に冷えていく汗、現実を打ち付けられた脳が揺れる

夢じゃなかった、夢じゃ、



「……エース…エースぅ…!」
「イテテテテ!痛いだろナマエ!いきなりなんだよ!」
「お前……どうして"ココ"に居たんだ…?」



そもそもこの船はエースの乗る本船ではない。昔はもっぱら俺が会いに行っていて、エースがこの船に乗っているのはまず無いことだ。



「 それが分かんねぇんだよなあ」
「え?」
「気が付いたら真っ暗な場所に立っててさ。どうも船の上とかじゃないんだ」
「……真っ暗な場所、」
「そう。それでナマエの名前に助けて貰おうと思って名前呼んでたら、いつの間にかナマエが目の前にいた」



違う。お前が俺の目の前にいたんだ

その真っ暗な場所っていうのは、あの世のことか?
そんなところで独りで立ってたのか?俺の名前を呼んで探していたのか?
なんてことだ、エースを、独りにさせてしまっていた



「……何で俺なんだろうな」
「え…?ナマエ?」



お前が会いに行くべき人間は、絶対に俺じゃない
オヤジにも、サッチ隊長にも、クルー仲間にも、ルフィ君やサボ君も、ご両親だって、たくさん居ただろう
どうして俺なんだ 俺は、お前の際に会いに来てもらう程の人間じゃないのに



「エース、お前他にも会わなくちゃいけない人がいるんじゃないのか?」
「どう言う意味だ?」
「なんで俺の名前を呼んだんだ?オヤジやマルコやサッチやオーズやルフィ君や他にも大勢、名を呼べる人間がいただろう」



よべる、にんげん。幼児に戻ったように、拙く紡がれたエースの言葉に頷く
しかしエースは、俺の耳元で聞こえるようにヘヘヘ、と笑った。空気が抜けるような、掠れた笑い方だ。似合わない




「ちゃんと考えてたよ」
「うん?」
「オヤジもマルコもサッチもオーズもルフィもみんなの名前ちゃんと浮かんでた。指折り数えて、呼びたい人の名前思い浮かべて、そんで最後にアンタが浮かんだんだ」



で、気が付いたら名前呼んでた。後はさっき言った通り。だから俺は、一番にアンタに会いたかったってこと。これでいいか?



そうか、エース



「 ありがとう」

「?どーいたしましてー」






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