▼ 約束という不安定な契約をして生きている
深夜――
隣のナマエの屋敷に忍び込むのは造作もないこと
二階のベランダへと飛び移り、右から二番目のガラスを2,3回揺らせば簡単に取り外せる。この一枚以外は強化ガラスでビクともしないのだけれど
大きなベッドの上で、ナマエは規則正しい寝息を立てている
以前ナマエの部屋で寝泊りした時から分かっていたことだけど、
ナマエの寝顔は普段の顔より大人びて見える。なぜだろう?
「……いけない」
ナマエの寝顔に見入ってる場合じゃなかった。
部屋に設えられた洋服箪笥から、いつもナマエが着ている服を選んでカバンに詰め込んで行く。それから靴、帽子、下着、ナマエがよく読んでいる本を棚から何冊か抜き取って一緒に入れた
そこそこの大きさに膨れたカバンを持ち直し、ホーキンスは未だ寝息を立てているナマエの体を持ち上げて肩に担いだ
身長差はあるが、何とか持ち上がった。そのまま音を立てないように入って来たところから外に出る。ガラスは一応直しておこう。強盗の仕業だと思われても厄介だ
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深夜だったが人目に触れない道を選んで船着場に出る
用意しておいた船に乗り込んで、船室のベッドにナマエを寝転がした。何度か衝撃があったとは思うけど、それでもまだ目覚めないでいる
ホーキンスは床に座り込み、ベッドの縁に肘を置いてナマエの寝顔を見た
じっと、穴が開くぐらいじっと
色々と思うところがあるらしいホーキンスはそのままナマエを見続け、ついには朝日が昇った
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