▼ また明日が来るらしい
明日、自分はこの家を出奔するつもりでいる
明日はホーキンスの兄の18の誕生日で、兄が正式に家督を継ぐ日でもある
そうなれば明日からこの家に自分は不要になる。家の者に出て行くことは一切告げていないが、黙って姿を消しても特に問題はないだろう
海で名を上げれば、自ずとこの家にも何があったかは伝わるはずだ
心残りもない
未練もない
ただあるのはナマエのこと
ホーキンスはテーブルの上にカードを広げた
未来を予見する力があると分かったとき、ナマエはいたくホーキンスを褒めてくれた
この力で他人のことを見たことはなかったし興味もなかったけれど、
今初めて、ホーキンスは他人の未来を見ようとしている
「…………」
一枚目のカードも、
二枚目のカードも、
三枚目も四枚目も、
ホーキンスの顔を険しくさせる結果ばかりだ
――ナマエの家は、ナマエが当主になった次の年から落ち目を見る
――婚約者の家に強盗が入り、ちょうど居合わせていたナマエは足の靭帯を切断され歩けなくなる
――歩けなくなった兄の代わりに彼の弟が仕事を任されるが役立たず
――ナマエが5年以内に死亡する確立、97%
「………ナマエ」
――ホーキンスが思い人を連れ海に出た場合の死亡確率、18%
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