▼ 忘却者
記憶は薄ボンヤリとしています。霧、靄、霞がかかったようで、思い出そうとすると酷く頭が痛くなるのです。そのモヤモヤとした物体の向こう側に、見覚えのありそうで、なさそうな人影が1つ…2つほど見えるのですがその実体を掴むことはできません。あの人影はいったい誰で、自分のなんだったんでしょうか。とても大切なことのような気がするのに、痛む頭はどうしても追憶を避けます。思い出してはいけないから痛むのか、痛むようなことだから思い出そうともがくのか
イタイイタイと頭を押さえるサッチに、マルコは笑いながら声をかけます
「しかしサッチよぉ、お前いつの間にヤミヤミの実食ったんだよい」
「あ…?」
「はしゃいでたじゃねぇか。皆の前で盛大に食ってやる!って言ってたのに。こっそり食いやがってよい」
「あ…ああ、そう、だった、か?」
「?しっかりしろよい4番隊長どの」
「はいはい1番隊長サマ」
ああ、そう言えば、ティーチの野郎がすげぇ悔しそうな顔してたなぁ。何かあったんかねい。サッチ何か知らねぇ?
ドクン
マルコのその言葉に、心臓の辺りと、頭の奥が痛み出しました
呻きながら抑えても、痛みは止まりません
大丈夫かと心配してくれる友の言葉に何とか返事を返しました
「だ、大丈夫だ。ティーチのやつは、あとでおれが訊いてみるよ」
「そうか?無理そうならエースにでも頼んどけよい」
「おう」
この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう
知らない方がいいよ、
朧気な2つの人影が、そっとサッチの背中を押し返したような気がした
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