OPend | ナノ
×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -


▼ 忘却者

記憶は薄ボンヤリとしています。霧、靄、霞がかかったようで、思い出そうとすると酷く頭が痛くなるのです。そのモヤモヤとした物体の向こう側に、見覚えのありそうで、なさそうな人影が1つ…2つほど見えるのですがその実体を掴むことはできません。あの人影はいったい誰で、自分のなんだったんでしょうか。とても大切なことのような気がするのに、痛む頭はどうしても追憶を避けます。思い出してはいけないから痛むのか、痛むようなことだから思い出そうともがくのか

イタイイタイと頭を押さえるサッチに、マルコは笑いながら声をかけます


「しかしサッチよぉ、お前いつの間にヤミヤミの実食ったんだよい」
「あ…?」
「はしゃいでたじゃねぇか。皆の前で盛大に食ってやる!って言ってたのに。こっそり食いやがってよい」
「あ…ああ、そう、だった、か?」
「?しっかりしろよい4番隊長どの」
「はいはい1番隊長サマ」





ああ、そう言えば、ティーチの野郎がすげぇ悔しそうな顔してたなぁ。何かあったんかねい。サッチ何か知らねぇ?







ドクン



マルコのその言葉に、心臓の辺りと、頭の奥が痛み出しました
呻きながら抑えても、痛みは止まりません
大丈夫かと心配してくれる友の言葉に何とか返事を返しました



「だ、大丈夫だ。ティーチのやつは、あとでおれが訊いてみるよ」
「そうか?無理そうならエースにでも頼んどけよい」
「おう」



この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう
この痛みはなんだろう






知らない方がいいよ、



朧気な2つの人影が、そっとサッチの背中を押し返したような気がした








prev / next