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▼ 迷子

「………おれ、帰れっかなぁ」
「オレに聞かんでください」
「イケメン君はどー思う」
「帰れんじゃないんすか?来れたんだから、帰れるっしょ」
「そうだな…。うん、そうだそうだ」
「納得していただけたんなら、寝るよオレ」
「ああ、おやすみ!あ、布団出してくれてありがとな!いつもハンモックで寝てたから床が固いのって違和感あるなやっぱり。いやでもこりゃあこれでなかなか」
「寝る気あります?」



あるのだが眠れない。そう答えたサッチに、そりゃそうかそんなもんか。とナマエは布団の中で溜息を吐いた。モゾっと動き出して、ベッドの下に寝そべっている男を見る。特徴的だったリーゼントが隠れてただのロン毛のオッサンになった時にはビクついたけど、見慣れるともう普通のオッサンだ。傷要素でかろうじてサッチだ



「……じゃあ眠たくなるまで話でもしよう」
「マジか!さんきゅぅ!」
「メガネも呼ぼう」



もう時計の針は夜中の1時を指しているが、アイツなら起きてゲームしてるはずだ。
だって日曜の夜1時だぞ。夜更かししてないワケがない



「もしもしオレだ」
『金なら無いので他を…』
「オッサンが眠れないから話に付き合ってやってほしい」
「イケメン君が付き合ってくれるんじゃねぇのかよ!」
『なんか僕じゃ不満そうな声が聞こえてくるんですけど』
「い、いや!メガネ君も暇ならオッサンと話そう」
『いーですよ!ちょうどリナちゃん攻略し終えたところだったし』



音声通話からフェイスタイムに映ったのでスマホの画面いっぱいに友人の顔が映し出される。
驚きの声を上げたのはサッチだった。夜中なのに。
どえらい声量で叫びだしそうになったオッサンの口をすかさず手で押さえる



「いま、夜。静かに」
「す、すひまへん」
『あ、ちゃんと泊めてくれたんだオバサン達』
「一日だけって協定で」
『うーん…それじゃ足りないかなぁ…』
「もー無理だぞオレん家」
『じゃあ僕も掛け合ってみるよ』
「すまねぇな2人とも…サッチさんもう感謝し尽せねぇよ…」
『これでサッチさんがロリだったら遠慮しないんだけど』
「ろり?」



で、なんだっけ? ああ、サッチさんが不安がってる話ね



『大丈夫ですって。来たんだから、帰れますよ』
「イケメン君と全く同じこと言うなメガネ君」
『え、やだな』
「なあ」
「お?」
「ヤミヤミの実って、何が出来んの?」
『マンガじゃ、吸い込んだり吐き出したりしてたような』
「ふーん」
「……」
「サッチ?」
「ん?」
「いや、ボーっと手ぇ見てたからなにかと」
「なになに?心配してくれたのか?イケメン君、いー奴だな」
「………寝るわ」
「わー!待ってすまん!」
『ナマエの扱いには気をつけてくださいよサッチさん』
「おう」



ほーと物珍しそうにスマホを触るサッチ
赤いボタン押すと通話切れるからね!お、おう!と言う二人のやり取りを見ていると、本当に眠たくなってきた
ぼんやりと黙ったままでいると、ニュっとサッチが顔を覗き込んできた


「…!?」
「あ、寝ようとしてたか?」
「び…ビビッた…」
「ははは、すまねぇ!」
「……んでそんなテンション高いんだ…」
「いやー、なんでかな」
「…とりあえず、オレもう寝るわ」
『あ、おやすみー』
「おやすみなメガネ君!」
『サッチさんも。また明日』
「赤いボタン切って通話終了」
「ここだな」



画面を恐る恐るタッチして赤いボタンで通話を切ることに成功したサッチは、満足感に満ちているらしい
スマホを充電器に指して、もう一度布団を大きく被りなおした



「じゃ、寝るんで」
「おう」
「…まー、何やかんや大変だろうけど、明日考えよう。あした」
「そうだな!そうするぜ」
「……おやすみなさー」
「おう、ナマエ 今日は色々とどうもありがとうな。おやすみ」



フツウにイイ人だな




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