▼ いとも簡単にあなたを忘れることが出来たならこんなに泣くことはなかった
皆の落ち込んだ肩を撫でて回る、愚かな慰め行為を始めたのは誰だ。俺だ
生き残った船に何とか乗り込んで、幾ら海を進んだのか。見張り台に人間はいないし、航海士も床に伏せている。誰がこの船を動かす。誰も動かないし動けない
オヤジとエースが、いなくなることが、こんなに空虚を生むなんて誰が想像したんだ
いやあの2人が死ぬ、なんてことを考えたことがある奴なんていないんだ
エースは俺たちの中の誰よりも強いし、
オヤジはオヤジでオヤジたる所以はあの人が白ひげだからで、
誰が一体、こんなこと
「うぅ…っ、うっ…」
「ぐぅう…!エース…!」
「オヤジぃ…!」
「ああ、うわあああ!」
「…… …」
俺の何の慰めにもならない励ましを受けてスイッチが入ったみたいに泣き出す奴ら
俺1人、何をやってんだ
涙が止まらない。嗚咽は辛うじて我慢しているが、触れる手は震えている。止まらない
別行動を取っているマルコ隊長はまだか
赤髪が一緒にいるから問題はないと思うけど、マルコ隊長、いやもう誰でもいい
誰でもいいから、この船の空気をどうにかしてくれ
「…………エース……」
お前じゃないか。暗くて重い船内の空気を明るくするのは、エース、お前の役目だったじゃないか
なのにどうしてお前はいない。見てみろ俺を。慣れないことするから、サマにならないだろうが
お前だろエース お前がみんなの、太陽なのに
「…エース……!」
ああ、ちくしょう
重い
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