「なあ、オレん家に変なオッサンいるんだけどこれって不審者ってことでおっけー？」
『しかも男狙いの変質者の可能性が微レ存だね。後ろの穴には気をつけて』
「マジかー」
『一応警察呼ぼうか？』
「頼むわー」
『電話でんわ…あ、今手に持ってた』
「死ねー」



引きこもりの友人じゃアテにならない。此方から掛けた電話を一方的に切り、リビングの真ん中でナマエに向けてファイティングポーズを取っているリーゼントの男をダルそうに見つめた。一応の抵抗とばかりに同じポーズを取ってみる。端から見ればかなりシュールな光景だ



「金目のモノはないから速やかに出てってください。今なら通報しませんから」
「待ってくれ。おれの話を聞いてくれ」
「…なるほど。強盗犯がよく警察等に話す自分の哀れな身の上話ですね。聞きましょう。話し終わったら出てってください」
「き、聞いてくれんのかよ！」
「でもオレから同情を誘おうってんなら無駄ですよ。無慈悲なんで」
「自ら言っちゃうのか…い、いやまあいい。とにかく聞いてくれ。此処はどこだ！？」



聞いてくれって言うか訊いてくれって感じだなこのオッサン
話が違うじゃないか、とナマエは眉間に皺を寄せたが、目の前の不審者があんまりにも怯えた顔をしてるので無慈悲な性格なりに親切を焼いてみる



「ここは日本です」
「ニホン？」
「……」



あれ。ジョークのつもりでまず日本であることから告げてみたが、不審者はいきなり疑問に思ったらしい。ニホン、のイントネーションもおかしい。にほん↑と言う感じだった。もしかすると外人かもしれない。髪の色が明るめの不審者かと思っていたけど、外人かもと思うと途端にそうとしか見えなくなった



「……大丈夫っすか。日本て分かりますか」
「い、いやわかんねぇ！ニホンてなんだ？どこの海の国だ？オヤジたちは？マルコは？エースは？モビーディックはどこだ！」
「………ん？」



今、聞き覚えのある単語が幾つか飛び出してきた

マルコ、エース、モビーディック



あれ、それって　ワンピースに出てくるキャラじゃね？



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