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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ 楽園に住む姫

今日は姫様を見ていない。海軍船にも来ていないし、どうしたんだろう?
ヘルメッポが言うには、「早朝から城の方でお父上さんと話し合ってる姿を見たって女中が言ってた」らしい。盗み聞きはよくないぞ、とヘルメッポを叱っても、姫様の方が気に掛かる。もしかして、お父上殿に怒られているのだろうか。肩車をしたことについてなら咎められる責任は僕。姫様を散歩に連れ出したのも、処罰されるなら僕だ。姫様は何も悪くない



心配で心配で、城の門の前で右往左往していたら、いつの間にか時間が経っていたみたいで
僕を見かねた門番の方が姫様に取り次いでくれたらしく、城に入っても良いと許可を貰った

巨大門を潜り、御殿を見れば、石畳の上の階段に腰掛けている姫様を見つけた
「姫様!」落とされていた顔が上を向く。その顔は少し、元気が無いように見える



「姫様、どうされたんですか?や、やっぱりお父上殿にお叱りを…」
「違う。怒られてなどおらぬ故、案ずるでない」
「本当に?なら良かったのですが…」
「うむ、コビーは気にせずとも良い。それよりもひーに付き合うのじゃ。桜並木が見たい」
「分かりました」



腰を上げた姫様が、さっと僕の右手に左手を合わせてきた



「肩車は駄目なようじゃから、手を繋げ。それなら許してくれるじゃろう」
「はい、いいですよ」
「うむ」



姫様とこうして桜並木を歩くのも最早日課になりつつある
海から離れこうして陸地ばかりで過ごしているが、海にはない花々や木々の美しさは目の保養だ。…僭越ながら姫様の存在も、自分にとっては




「のうコビー」
「はい?」
「コビーは、この国が好きじゃろう?」
「はい、勿論です」
「ひーもじゃ」



ひーもこの国の全てを好いておる。国の為に働いてくれる民の皆々も、その民の為の政を行う父上も、美しく咲く国花も、緑豊かな自然も、動物達も、全てじゃ



そう語る姫様の顔は見たことないぐらいに晴れ晴れとしている
まるで、何かを悟り、笑うみたいな



「ひめさま…?」
「そうじゃコビー」
「え、は、はい」
「明日、ひーはちぃと用事がある。明日は城に来ずとも良い。そち等の船で待機しておくのじゃ」
「…?分かりました」
「うむ」



ぎゅっと、姫様は僕の手を一度強く握られました
その時の僕は驚いて、姫様の手を握り返すことが出来なかったけど


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