▼ 途絶えぬ一日をわたしはまた迎える
「ナマエさん!もっと早く漕いでくれよ!」
「お前みたいな男子高校生乗せて坂道を登ってる俺に言う言葉か!大学遅れる!!」
「俺は高校に遅れる!」
「お前もルフィ君みたいに一緒に学校に連れてってくれる友達作れ!不良みたいな奴とばかりつるまないこと!」
「サッチとマルコの悪口は許すけど友達選べないエース君可哀想みたいなのは許さん!」
俺のミハエル・ペリオ・シューマッハ号(愛自転車の名前)のペダルとハンドルはもうガッチガチだ。これ以上無理させないで!と言うサドル達の声がヒシヒシと感じられる。持ち主の愛は偉大だろう
なのに今後ろの荷台に座ってやいのやいのと煩いエースは何だ。どうして毎朝毎朝、俺が大学に行くついでにコイツの送迎をしなくちゃいけないんだ。解せん。エースの幼馴染と言うポジションに生まれてしまったのがこのしんどさの始まりだ。多分
「エース、大体お前もう大学受験とか就活の時期じゃないか?進路は決まってんのか?」
「担任みたいな事言うなよー」
べー、と舌を出してるんだろうが前を向いて漕いでる俺には見えないぞ残念だったな
ようやく坂を上りきった。後は下るだけ。楽チン
下への重力に逆らわないエースの身体が、そのまま俺の背中に伸し掛かって熱いやら重いやら
「耳をすませばみたいだ」
「ジブリ映画好きめ」
「ルフィが好きなんだよ」
弟のルフィ君と2人で住んでるこの兄弟の家にはジブリ映画のDVDが本棚に並べられているが、元々は俺がやった奴だぞ。覚えてるのか
「耳をすませばの自転車シーンってたらさぁー」
「おー」
「ナマエ 会いたかった、夢みたい」
「…な、」
ってトコロだよなー本編に出てくるのはナマエじゃなくてせーじ君だけどな、とエースが笑う
会いたかった、
夢みたい、
本当にそうだよ、エース
「……エース!」
「んー?」
「 大好きだ!!」
「は!?な、何大声で叫んでんだよバカ!!」
「ずっと!」
「そんな台詞ねぇぞ!?」
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