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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ 一ツ目奴隷2


「やめてあげてぇぇぇ!この子イイ子ですからぁああ」
「霊魂に善いも悪いもない。いずれ悪害を被ることになるぞ」
「だってだってあんな辛い事情を聞いちゃうと情の1つも沸いちゃいますよそれが人間ですよ!」
「おれは沸かなかった」
「ホーキンス船長のことは割りと人間じゃないと思ってますからどうともしません!!」



1ツ目の生首君を抱きかかえてホーキンス船長から遠ざかる。生首君、ホーキンス船長の「はらう」発言を聞いてから微動だにせず何も喋らなくなったけど大丈夫!怖がらなくてもいい!君だけはオレがどうにかしてどうにかするからね!



「どう如何にかするつもりだ」
「人の心ん中読まんといてください!」



確かにオレにはどうする力もないのであったたたた…
ただ"呼び寄せてしまう"だけだったオレが"視える"のが珍しくてそら情の1つも沸いちゃうじゃんか…ちょっと可愛がりたいって思うじゃんか…



「可愛がるのは結構だがな、ナマエ」
「なんすか!」
「その首男、大変なことになっているが」
「うへ? …ギャアアアアアアアア!!?」




ホーキンス船長が指摘した通り何か大変なことになってる!ちょっと目を放した隙に何事!?


刃物で切断された跡がまざまざと残る生首君の首下から、ダラダラと止め処なく血が流れてき出していた。不自然なぐらい大量に流れてくる血は抱えているオレの手を伝い、オレの足元に血溜まりをつくり、つつー…と流れホーキンス船長の足元にまで及んだ。まるで血が意思を持ち独りでに動いているみたいに



「お、おい!生首く…!」
「! 離れろ、ナマエ」




ホーキンス船長の注意より早く、生首君の顔の真ん中に鎮座していた1ツ目がギョロリとひん剥いた。それは文字通り血眼で、血管が切れるんじゃないかってぐらい膨張している。
そしてボコ、ボコッと音を立て、目の周りから肉塊が生まれてくるではないか!
あまりの気持ち悪さに「うわっ!?」と手を放せば、ゴロリと甲板に転がった首の肉塊から腕が生え、脚が生え、腕が生え、腕が生え、脚が生え、腕が……



ギギギィイアアアアアア゛アア゛ア゛アアアア!!!




「手ぇめっちゃ生えたー!?」
「醜悪だな……」
「誰がそんな素直な感想抱けって言いましたか!!」



今の大きな叫び声に他のクルー達も気が付いたのか、「何事ですか船長ってぎゃあああああああ!」「何の悲鳴でってうおおおおおおおおおおおお!?」と集まり騒がしくなる。
集まってきたクルー達の方へ生首が1ツ目を向ければまた上がる叫び声。未だ尚腕や手を巨大化し膨張した生首から直接生やしているソレは最早幽霊とか霊魂とか言う次元のモノじゃない。怪物だ!



『……イヤダ シ゛ジジジジジジニタク゛、ナ…イ…!
「えっ…!?お、おい生首く、」
『モウ゛コロサレルルルルルルル…ノハァ゛イ゛ヤ゛ダアアアア…』



血走っている1ツ目から大量の水が流れ出した。涙なのだろうか。その色はとても赤く、血のように感じるが



「ナマエー!コイツは一体なんなんだー!?」
「か、可哀想な生首!!」
「何だそのゾウみたいな説明は!ってうおー!?」
「のわあああああ!?」



生首から生えた巨大な腕の一本がオレと仲間たちの間に割り込むように入って来た。甲板を減り込まさんと言う力強さで叩きつけられたその腕に、オレとクルーたちの背中には一様に汗が流れたに違いない



「どっ、どうしましょホーキンス船長!!」
「…………」
「船長!?」



呼びかけても返事がなかった事に不安になって後ろにいるであろうホーキンス船長を振り返れば、
腰元から下げていた剣を抜き払い、はぁ…と、
か細い溜息を吐いていたところだった



「やれやれ…船が壊れてしまう」




言うが終わるや否や、ダンッ!と甲板を強く蹴って駆け出したホーキンス船長は目にも追えない速さでオレの脇を通り過ぎると剣を構え1ツ目に斬りかかった。
オレ達で追えなかったスピードが、見るからに鈍足そうな(さっきの攻撃は物凄く早かったが)1ツ目は対処し切れなかったのか無防備に眼球を晒してしまっていた。
その目のちょうど真ん中に、剣を突き立てた
目から血が噴射する音が響き、そして暗い海を裂く様な断末魔が響き渡る。鼓膜が引き千切れそう


目を閉じていたオレが次に目を開けた時、巨大な生首は見えなくなっていた、いや、消えていた
生首がいた場所には、頭から血を被ったであろう筈なのに、斬りかかる前と全く同じ姿で何事もなかったかのような佇まいのホーキンス船長が立っているだけ



「…?え、ホーキンス船長…?な、生首は…」
「……もう出す血も失くしたらしいな」
「どう言う意味ですか?」
「……目を失い体を失い、理性を失いそして血を失い……憐れな者だった」



さあ、もう夜明けだ。朝食の準備をしてくれ

剣を腰の鞘に収めたホーキンス船長は固まっていたクルー達に声を掛け、オレの脇を横切って船室に戻っていった



もしかしたら自分を付き纏う者たちの何かが少しは分かるんじゃないかと、
期待をしてみたがどうやら無駄なことだったようだ。至極残念である














  ボクノ ―――ヲ カエシテ



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