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▼ 聞こえない声でを吐く

*過去話


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「お前がオレをバーに誘うのは珍しいな。夜が寂しいのか?」
「海賊になることにしたよ」



人の話を聞かない

普段の謹直で殊勝なドレークを知っている者達は「いやいやそんな訳ないじゃないか」と笑うだろう。オレだって、こうして友人として付き合うまではそう思ってたさ



「………そりゃまた、何で」
「………」
「…って訊いて、関係の無い奴に教えてやる奴じゃないよな、お前は」



力なく笑ってグラスを傾けるけど、ちっとも味が分かりゃしない
ドレークの口から今しがた飛び出した「海賊」「に」「なる」「こと」「に」「した」この単語の羅列が不自然極まりないのだ
なぜ?どうして?海賊なんかに?



「……まあ、なら、…元気で」


ようよう出した台詞は間抜け染みていた。他に何と言えば良かったのか分からない
この友人は、浅慮でも愚かでもない。必ず何かこうなった理由がある


「…… …あのな、ナマエ」
「ん?」


グラスを割らんばかりに力強く握っていたドレークの手が小刻みに震えだした


「お前が、」
「うん」


聞いたことないような弱い声だ


「もしも」
「うん」
「おれのことを」
「うん」
「少しでも、信頼、してくれているのなら」
「…うん」



おれに、付いてきてくれないか




つまり、それは暗に、"海軍"と言う組織よりも、
"X・ドレーク"という個人を信じろと言うことか



「……オレが付いて行けば、経緯を全部話すか?」
「ああ、必ず」



ドレークのその真摯な顔が好きだから、見つめられると参る
考えを整理する為に頭を掻いて、話し始めてから一度もオレから目を逸らさないドレークの目を見つめ返す




「 オレはお前を信用してないから一緒には行かない」


「 な、!」



衝立の向こうで、バレないように耳を欹てていたバーのマスターに聞こえるようにそう言った。覇気で分かったんだ残念だったなマスター


しかし、覇気を習得していないドレークはこの事に気付かず、まさかオレからこんな言葉が発せられるとは思ってなかったのであろう。驚愕の色を浮かべている。

その顔を掴んで引き寄せ、耳元でさっきの言葉の嘘を言う



「嘘だ ――お前の行く道を、オレも歩ませて貰うよ」
「…ほんとか!……しかし何故嘘なんか…」
「まあ、また後で話すさ」
「そ、そうか… ナマエ、ち、近いから、早く退いてくれないか…?」
「おっと」



バーに入ってから時間が経ち、日付を跨いでいた
今日は、 4月1日







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