▼ しなだれる倦怠感
向こうから誘われたから、まだ完治し切っていない身体に鞭打って行為に応えたと言うのに、
ぼんやりと天井を見上げるナマエは今までどおりに頓珍漢なことを言う
「やっと落ち着いた…」
「………………は?」
スルーしようと思ったが、反応を返さないと気が済まない自分は何だ
「……どーいう意味?」
「パウリーって、オレのこと好きだろ?」
「まあ、な」
断定口調なとこが腹立つが間違った事は言われてない
「寒い」と言えば背中を撫でてくれる掌も、
ナマエのせいで痛む腰を擦ってくれる手も
ロクでもないことを言う口も、
脇見をするフラフラとした目も、今のところずっと大好き。
そんな事がどうしたのか?
「…夜だからセンチメンタル?」
「まさかー」
ナマエはセットしてある髪の毛を自分の手でぐしゃぐしゃにするのが好きだから、
毎日時間を掛けてセットしてあるオールバックを
ナマエにぐしゃられるのは気持ちが良くて目を細くする
でもナマエの手が、塞がったばかりの頭の傷口に触れて少し呻いてしまった
「…痛いか?」
「………少し」
アイスバーグやルルたちの手前強がって見せたが、エニエスロビーで受けた傷は酷いモノだったのだ。肋は折れていたし肋骨には皹が入り腕は持ち上げるのにも気力が要って大変だった
本当は少し痛む、と告げたパウリーの頭の傷をナマエはゆっくりと撫でた。
その目に明らかな心配の色が浮かぶのを見る
「パウリーが全快するまで、オレがキッチリ面倒看てやっからな」
「…ナマエが?………無理だろ」
「信用しろってパウリー オレはお前の恋人だろ?」
浮気ばかりする男のどの口が言うんだ、
ヘッと口を上げたパウリーは、ナマエの胸に思い切り頭突きをかました。ふぐっ、とくぐもった声が聞こえてきたがコレは無視。あぁ落ち着く
「ナマエだってルッチの奴に左胸貫かれてただろ あれビビったんだぞおれ」
「あーあれはヤバかったな。 でも昔に、組み場に積んでたコンテナが崩れてきた時の方が怖かったわー」
「あん時はお前!!ほんっとーにナマエが死んだと!!」
「おースマンすまん。嫌なこと思い出させたなー」
ピロートークに相応しくない話題だったな、反省
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