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▼ こんな日常でいいですか






「なぁ、お前もそう思わないかパウリー」
「なんだ何をだ主語を入れろ。あと無駄口叩かずに手ぇ動かせ」
「俺な、葉巻吸ってる男って渋かっけぇと思うんだよ」
「……………何で」
「口元がお留守になってない感じがしないか」
「……意味分からねぇよバカ」




お?パウリー、お前葉巻なんて吸い始めたのか?まだ15のガキが駄目だろう。 うっせールル!黙れ!! なぜ!? はっはっは!愉快だろうルル! そうかまたナマエのせいだな






と言う、幼少の頃の可愛い俺のパウリーエピソードを一つ頭の中で紹介したが、どうだこのパウリーの可愛さと一途さ。どう思う諸君。可愛すぎだと思わないか。適当に口から出任せで言った言葉を信じて葉巻きを吹かすようになったパウリーの思考回路は単純だ。ナマエがカッコ良いと思う恋人になりたいから。ただそれだけの為に。だがこれが結果オーライで、今日のパウリーの見た目とか人格的に葉巻はマストアイテムになっている。うん、本当に俺ってパウリーに関しては良いことするよなぁ
しかし




「あーーーーーー重たいーーーーー」
「さっさと運べナマエ。3日前に起こした浮気の罰則分の木材はまだまだあるんだぞ」


両肩に巨大な材木を担いで汗一つ掻いてないクセに何が重いだ。パウリーからナマエの監視役を頼まれていたルルは右から飛び出た寝癖を押し込みながら愚痴る。今度は左側に出直した


「ルル、お前が運べよ」
「なぜ!? ちょっとは懲りろお前も!パウリーが不憫だろう!」
「不憫?そうかぁ?」




ナマエと言う男はつくづく下衆野郎のように思う
自身が浮気をしたせいでパウリーが傷ついていると言う事なんて、殆ど気にしちゃいないのだ。何故ならそれは、パウリーが自分を好いているのは当然だと疑いもなく確信しているからで、ナマエの元来の性格が下衆いと言う訳ではない。少し面倒臭がりで疲れるのが嫌いな腕のいい船大工なのだ。一応




パウリーの命令で抱えて運んで来た大量の木材をパウリーの居る1番ドックに持って来たのはいいが、肝心のパウリーの姿が見当たらない。
近くを歩いていた男に所在を聞けば、葉巻きを切らしたから買ってくると言って少し前に出て行ったらしい。なんてタイミングの悪い。ナマエはドッと疲れを感じた。ちゃんと頼まれた物を運んで来たことに対して、パウリーに沢山褒めて貰いたかったのに



「…ちょっと俺、パウリー迎えに行ってくんよ」
「そんな事言って残ってる木材運ぶのが嫌なだけじゃないのか!」
「勘の良い野郎は嫌いだぜ。但しパウリー以外」
「あっ待てこら!」


ナマエは身体がデカイくせに身軽だ。今だってドックを歩いていた男たちの間を風のようにすり抜けて出て行ってしまった


もう見えなくなったナマエの後姿に溜息を吐き、きっともう今日は帰って来ないだろうなと諦めて、ルルも持ち場に戻って行った





ウチのカク程までは身軽ではないので、いつかやってみたい屋根伝いの移動を今日も断念し、大人しくウォーターセブンの路地を歩く。いつもパウリーが葉巻きを仕入れている店のルートはこの道であっている。パウリーとは途中で出くわすか、帰って来てたところに鉢合わせするか、と考えていると、目の前から砂埃と土煙を上げて爆走している集団が近付いて来るではないか



「…もしかしなくてもこの集団は」



「パアアウウウリイイイイ!!!借金返せえええええこらあああああああ」
「返済日とっくに過ぎとんでこらあああああ!!!」
「テメェん家にカレンダーはねぇのかこらあああああ!!」

「悪い!!無い金は無い!!から返せない!!カレンダーはある!でもナマエの誕生日しか書き込んでない!!」
「返済日も書かんかいこの色ボケぇ!!!」

「パウリー」



やっぱりパウリーだ。まーた借金取りに追われてやがるぜあいつ、だっさいなー。でも久しぶりに見た。パウリーが彼奴らに追いかけられてるところ。

えらく必死の形相で全力疾走してるせいか、進行方向にナマエが立っている事にも気付けていないらしい。意識は完全に背後の借金取りの面々に行っている


それがちょっと癪で



「パーウリィー」
「うおおおっ!?」


今まさに身体の横を通り過ぎようとしていたパウリーの身体を引き止める。腹に手を回し、反動でそのまま小脇に抱える。慣性の法則で腹部に鈍い痛みが奔ったパウリーだが、自分の腹に回る腕がナマエのものであると気付いた


「な、ナマエ?何で俺を抱えるんだ?」
「逃げようと思ってな」

「あ!ナマエ!!パウリー連れてくな!」
「パウリー置いてけ!!」
「断る!!」
「借金返さない悪いのはその脇の奴なんだぞ!」
「葉巻買いに行っただけのパウリーを見つけてこんな追いかけ回すのは可哀想だろう! あと他人がパウリーのケツ追っかけ回さないでくれ。強かに妬くから」
「ナマエ…!」


そこの小脇に抱えられてる男頬染めんな!と叫ぶ借金取りのサングラスがよく似合うお顔を上から踏み潰しつつ、男たちを飛び越えて逃げる算段で行こう。この街を走るのなら、借金取りやパウリーよりも上手く駆け抜ける自信がある。



「パウリー、今夜の夕飯はブルーノんとこ行って食べるか」
「おっいいな」
「しょうがないから奢ってやるけど、今日も条件がある」
「うっ……きょ、今日は何だ」
「パウリーのストリップが見たい」
「なっ!!バカやろ!!!」



残念だが小脇に抱えられたお前に拒否権はないぞパウリー!


頭を踏みつけ、蛙が潰れるような声を発する男達から全力で逃げる。このままドックに少し立ち寄ろう。運んだ木材を見て褒めてくれパウリー



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