▼ あいす
両腕は一応残しておくことになった。
動かないのだから切ってしまっても良かったのだが、肩幅がないと海軍コートを掛けられないからと言う理由により、形だけでもと思ったからだ。
両腕が使えなくなっても海軍は勤まる。
それに手が動かせないから、書類処理作業を免除されるらしい。その分戦闘面では変わらずコキ使われるようだが、ナマエからしてみれば願ったり叶ったりなことだ
今のところ、不自由をあまり感じてはいない。優しい同僚たちが気にかけてくれるし、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる恋人もいるお陰だ
「悩み…強いて挙げるなら幻肢痛に悩まされることか」
「…うん、それも大変だろうとは思うけどさ、医療のことはおれ分かんないから何かそれ以外で困ってることとか」
「ないよ。クザンが面倒看てくれてるからな。寧ろ前より充実してるぐらいだ」
食事を口元まで運んでくれるのは頼らざるを得ないとして、それ以外の日常生活はどうにか一人でもこなせる様にしないと
「クザン、聞いたぞ〜?お前に昇級の推薦があったんだって?やるじゃないか!」
「…面倒だから蹴ろうかなって、」
「駄目だ。貰えるもんはちゃんと貰っとけってば」
「ナマエが欲しいんだけど、くれる?」
「うーんそうだな、あげんこともないぞ?」
ああ駄目だ、また有耶無耶になって終わらしてしまうところだった
昇級するのなら尚更クザンは忙しくなる身だ
気にかけてくれるのは嬉しいが、
ちゃんと自分のことも省みるんだぞ、と伝える
分かってるんだか分かってないんだか、微妙な返事をしてクザンは曖昧に頷いた。
prev / next