▼ 恋情1
変に時間が余ってしまったから、自ら買出しを申し出た。本来の当番だったシャチ君は「ありがとうございますー!」と喜んでくれたが、ローが渋い顔をする。恐らくあれは、「あとで一緒に過ごそうと思っていたのに…」て思ってたんだろう。悪いことをしたような気は少しするが、自分から言い出したのに顔色を窺ったからと言って取り下げるわけにもいかない。そう言うところがKYなんだよお前、とローに言われてしまった。…そう言えば、遠い昔にもローにKYだと怒られたことがあったような気がする。懐かしい、もう今から19年も前の話だ
「うーむ……あいつが成長していない原因に俺は含まれていたり…しないだろうか…」
紙袋に入った今日の食材のせいで視界がよろしくない。何度か擦れ違う人々とぶつかりそうになりながら、停泊しているハートの船へまでの帰路を急ぐ。しかし、路地の曲がり角を曲がった時、"それ"は突如としてナマエの目の前に現れた。
「――うわっ」
「! いって!」
「おっと…すまない 前が見えていな……か……」
「あー…いえ、こっちこそすみま……ん?」
若い、男だ。恐らく二十歳ぐらいの、若い男 急に現れたことも、若い男であることも大した問題じゃない。
問題は、そんなことじゃなくて
「………、」
「え?……そうだ!ロー!ローはどこだ…!? なぁアンタ!こんくらいの小さい男の子、見なかったか?一緒にいた筈……いたかな、いやいた筈なんだけど!」
「ちょ……っと、待ってくれ……おち、落ち着いて、考えさせてくれないか」
どうして二十歳の頃の自分がいる。
なんで目の前に立ってる。おかしい。おかしいぞこんな展開 散々おかしな体験をしたと思っていたが、今までで一番群を抜いておかしい。夢だろうか、まさかこれは
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