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▼ 譲り受けた名前、そして約束

「お前は他の海王類に比べて優しい奴だな!」
『………おまえは 他の人間に比べて すごく変な奴だ』



ロジャー




わたしの鼻先に座っているロジャーは「おれの?どこがだ?」なんて笑ってくるけど、
海王類を恐れずに接してくる人間と言うだけで、特大級におかしな人間だとおもう
仲間の船と逸れて海を漂っていたところを わたしに食われなかっただけでも奇跡なのに
この男は我々の声がわかると言う こう見えて人魚族なのだろうかと思えば、そうではない

正真正銘の、ただの人間




「惜しいな。もう少し旅が出来たなら、お前を連れて航海したものを」
『……?おまえは航海をやめるのか』
「ああ。ちょっとな」
『…おまえは 他の人間と比べてもオーラがある。理由は問わんが、勿体のない』
「海王類に認められたか!こいつぁ嬉しい」



しかし いつまでわたしの鼻先に座っているつもりだ


 ほら、おまえの仲間の船を見つけてやった。
仲間達が怖がらぬうちに早くもどれ




「おっ!レーーーイリーーー!!」
「 ロジャー!?なんでお前は海王類の鼻先にいるんだ!!」
「こいつが助けてくれたんだ!」
「なに!?海王類が!?」



ほうら 怖がらせた

 そうだその反応が一番ただしい  コイツは おかしい





「……いい事を考えたぞ おい海王類!」
『なんだ もう離れろ』
「おれがお前に名をやろうじゃねぇか!」
『………何の為に?』
「お前はとてもイイ奴だ!おれはお前が気に入った。だから名をやる!」
『………』




『……おまえの所の船長は 変人か?』

「………ロジャーみたく会話は出来んが、いま海王類にすごく同情されている気がするな…」




会話がなりたたぬ

だから 何故おまえは わたしに名をやろうとしてるのだ



『……まあよい 申してみろ 別に名はあって困るものでもない』
「おおそうだろう! じゃあお前は今日から"ナマエ"だ!"ナマエ"と名乗れ!」



―――ナマエ


『…人間らしい響きだな』
「気に入ったか?」
『ふつうだ』
「そうか!気に入ったのなら、ナマエに頼みたいことがある!」
『名をくれてやって頼みごとだと…?』



船に足を付けたロジャーは、とても楽しそうに笑っている。

年不相応に小童らしい笑みだ



「おれには、もうすぐ子どもが出来る」
「生まれてくるおれの子は、当然だがおれの血を引いている!だから」
「いつか、おれの子がおれと同じようにこの海を旅するかもしれない!」
「もしその時おれの子に、海上での危機が襲うようならば、」
「ナマエ、お前が助けてやってほしいんだ!」





 なんだと? ロジャー、お前の子を助ける?




『……途方もない話だな。すべて不確かな事すぎるぞ。 そもそも、おまえの子がこの海にまで辿りつけなかったならば成り立たぬ話だ』
「誰の子でもない、おれの子だぞ?きっと成すさ!」
『自信がありすぎるぞ……そもそもお前の子がどれなのか、分かるとでも思うのか?』
「だから、"もしも"の話だ」
『………』



"もしも"
"ロジャーの子"
"偉大なる航路"
"力になってくれ"

"ナマエ"







『……いいだろう』
「お!」
『退屈なときを過ごすだけもつまらない もしもおまえの子がわたしの前に現れたときは、なぜか航海をやめるお前の代わりに、子を護ってやろう』
「約束だぞ!ナマエ!」
『お前の子だと分からずに、食ってしまったときは謝らぬぞ』
「ああ、構わんさ!」











おかしな人間と おかしな約束を交わした

去り行く船尾を見送り、

後の海賊王と呼ばれることになるロジャーから受けたナマエと言う名を脳の片隅にきざんだ



ロジャーの子 わたしが 護るべき存在となる人間




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