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▼ 泣きべそかいて立ち上がれ

!過去話






きれいなばあさまは いつもけがだらけでした。
「ばあさま、いたくないの?」ってきけば、「ぜぇんぜん痛くないよ、ナマエ」とわらいます。
ぼくはほんとうなのかなぁっておもいました。
ぼくはけががだいきらいです。おひざをすりむいただけでもなみだがでます。
なのに、ばあさまはいたくないんだって。おかしいよね そんなの。
ばあさまは「おんなのひと」なのに。もっとからだをたいせつにしてほしいんだって、おかあさんがいってました。









近所のガキ大将に殴られたんだって。救急箱を戸棚に戻した母親は渋い顔をする祖母に笑いながら伝えた。「大した怪我じゃないんだけど、すっかり怯えちゃってて」5人の子どもに寄って集って殴られれば怯えもするだろう。
事に孫のナマエは泣き虫だ。他の同年代の子どもよりも成長が遅く、いつも背の低さでからかわれ苛められていると娘夫婦伝いに聞いている。
今までは、子どものする喧嘩だからと首を突っ込むのを控えていたけれど、今回は少々相手の子はおいたが過ぎる。


閉ざされた子ども部屋のドアを優しくノックする。中から鼻を啜るような音が聞こえた



「ナマエ? 婆ちゃんだよ、入っていいかい?」

「………だめぇ…」

「そう言わないで」



弱々しい拒絶の言葉にふっと笑いを零して、ノブを一回転
「…だめって言ったのに」 恨みがましい目つきで見てくる孫に「ごめんね」とまた笑って、つるは小さく身体を丸めている孫の隣に腰を下ろした。
海軍コートを着ているのに気付いたんだろう。「しごと?」と訊ねてくる孫に「終わって帰って来たんだよ」と答える。ふうんとそっけない返事が返って来た。



「痛いかい、ナマエ」

「……いたくない」

「おや なら良かったよ。お母さんは"随分痛がってたみたい"って言ってたんだけどねぇ」


冗談だったが、ナマエは「ほ、本当にいたくないよ!!」と声を荒げた。ガーゼの貼られた頬を真っ赤に紅潮させている。
「そうかい ナマエは強い子だね」 頭を撫でれば、その顔が余計に赤に染まった。



「なら… 悔しい?ナマエ」

「………うん くやしい…」


グスグス ナマエは目から涙、鼻からは鼻水を流して泣き出した。
あらあら ティッシュ箱を持ってそれを拭ってやる。
小さな体に人一倍の熱い心を持っているこの孫のことだ。さぞかし悔しい思いをしているのだろうと思ったら。やっぱり


「じゃあ、強くならないとね」

「…つよく、なりたぃい…!」

「ああ、こらこら ナマエの気持ちはちゃんと分かってるからもうお泣きでないよ」

「うぅ…っ、う…ぼく、も……ばあさまみたいに、つよくなれる?」

「ナマエから見て、婆さまは強い人だと思うかい?」

「うん、思う。ばあさまは凄いもん」

「そうかい 嬉しいねぇ」



勿論、ナマエだって強くなれる。婆さまなんて目じゃないぐらいにね。 そう伝えればナマエは目をパチクリと丸くする。ほんとう? ばあさまよりもつよく?ぼくが?
「婆さまの言葉を信じられない?」と訊けば首を緩く振ったが、それでもやはり半信半疑なようだ。どれだけ自分は、この孫の中で神格化されているのだろうと思ってしまう。私なんて、本当にちっぽけな存在でしかないのに



「…ナマエは海軍になりたいのよね?」

「うん!」

「もうすぐ海軍学校入学年齢になるわね?」

「…え、っと……あと、三年、後」

「そう ならそれまで沢山ご飯を食べて運動をして、ちゃんと身体を作らないと」

「…背も、のびるんでしょ?あとちょっとしたら…」

「成長期はどんな男の子にも必ず来るから大丈夫よ」



海軍に入ったら、近所の悪がきとは比べ物にならないくらいこわーい海賊たちと戦うことになるんだから、あんな子達に負けて泣いていちゃ駄目よ、ナマエ

グッと拳を握り締め、もう泣いていない孫の強い顔を見つめ返す。
きっと、大丈夫だ、この子なら。そう思えて仕方がない。初孫が可愛くて可愛くて、しょうがないって言うのも、あるけれど










きれいなばあさまは、いつもけがだらけだ
たまに、つかれたようなかおもする

もうそれを だまってみているようなこどもではなくなった
これからは おれが ばあさまをまもる




おこがましくもそう考えている俺のことを 婆ちゃんは一生、知らないでいい




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