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▼ ドフラミンゴ

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常連になっているバーは、今日も客の入りはまずまずだった。薄暗い店内には名前の知らないピアノソングが流れている。
数少ないカウンター席に座っているナマエとドフラミンゴの組み合わせは、いつものことながら一際目立っていた。


「おいマスターぁ!もっと度の強ェ酒持って来ォい!」

すっかり出来上がっているドフラミンゴの要望にも、馴染みのバーのマスターは嫌な顔一つせず、隣の席でブランデーを煽っているナマエに「よいので?」と伺いを立てる。ドフラミンゴのすることなすことで逐一ナマエの了解を得る必要は決してないのだが、「ああいいぞ、好きに出してやれ」と答える姿はとても楽しげだ。お気に入りの銘柄を飲み、美味い料理で腹を満たす幸福。バーへ来る前にドフラミンゴへと聞かせていた愚痴も、不機嫌だった様子も、すでにナリを潜めている。

だがしかし、ドフラミンゴの方はその限りではなかった。
次から次へと浴びるように酒を飲んでいることも、"自棄酒"に他ならない。飲んでないとやってられるか、と言いたかった。それもこれも全部、ナマエに告白しやがったナマエの部下が悪い。それに1%くらいは、ナマエにも原因がある。隣のスカしたナイスミドルにグラスの中のアルコール度数が高い酒をぶっかけて「ざまーみやがれこのアングラー野郎!」と詰ってやりたくなった。対象や理由は判然としないが、ドフラミンゴは今、とてつもなくムカついている。


「 ナマエのバカ野郎が!」
「年上をバカ呼ばわりとは何様だ」
「ドフラミンゴ様に決まってんだろぉ?フッフッフ!」
「あー、はい、はい 申し訳ありませんでしたね、ドフラミンゴ様」

ドフラミンゴは突如ナマエに頭を撫でて貰いたくなった。だがしかし、ナマエの大きな手は今はグラスを持つ為に使われている。酒の追加はまだ出来ない。マスターはまだカウンターに戻って来ない。ムカついて仕方がない。アルコールが、ドフラミンゴを開放的にさせ過ぎている。

「ドフラミンゴ、うつ伏せになるならそのサングラスは外せと毎回言ってるだろうが」
「あー…? …ンならナマエが外してくれよ。ん」
「何を甘えて……ったく」

狙い通りだ。ナマエの手がグラスを離れ、ドフラミンゴの顔へと伸びてくる。大人しくされるままになり、ナマエの無骨な指が目元に触れた瞬間にも身体をビクつかせてしまう。なるべくナマエの前では平静を装っていたいのに、カラダとはとても正直だ。やめろ、嫌われてしまうだろう。

「ほら、取ったぞドフラミンゴ様」
「あー、ご苦労」
「偉そうにお前は……そんな調子じゃ、お前の部下の人間も苦労しているのだろうな」

勘違いをしている。部下の前でまでドフラミンゴがこんな態度を取っているもんだと。そんな筈がないだろうが。お前の前でしか見せてねぇよこんな姿、喜べ。――いや喜ぶはずがないか、ナマエが。

けれど今、ドフラミンゴは『酔っている』
日頃はあまり見せない悪酔い中だ。多少の無礼講も、きっと許される。

戯れも、

告白だって、


「……ナマエの前でしかこうはならねェんだぜー、って言ったら、どうするんだぁ?」


グラスの中の氷が、解けてガランと音を立てた。


ナマエは眼を真ん丸くさせている。 だが、頬に僅かな赤味があった。

 ああこいつも多分――、



「――……じゃあ喜ぶことだなドフラミンゴ。 いま俺は、らしくないことに  "嬉しい"と感じた」



――酔っているんだろう。





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