▼ ドラゴン?
*雨男主/友愛
久しぶりに革命軍の連中に捕まった。
フラフラとグランドライン近辺をうろついていただけだから仕方ない。
奴らのレーダー網から逃げるにはステルスになるかどこかの王国か海賊船に匿っていてもらうしかない。
「やあドラゴン 二年ぶりだなぁ」
「あぁそうだなナマエ 正確に言えば四年半ぶりだ」
「あれ、そうだったか」
とぼけているのでもなく、本気でドラゴンとの再会は二年ぶりだと思っていたナマエはあれ?と首を傾げる。
しかし直ぐにまあいいか、と悩むのをやめた。久方ぶりに会ったと言うのに相変わらずな男だとドラゴンは口を噤む。ナマエを見つけて来たバニー・ジョーは若い男なのでそのだらけきった態度に「ナマエさん!」と注意をしたいようだ。
「…それで、どうして俺は革命軍に連れて来られたんだろう?」
「なに、我々は仲間じゃないか。偶には顔が見たくなっても許されるのではないか?」
「あー、顔が、な。見たかったのかドラゴンは。ほー」
"嘘吐け"
ナマエの笑顔はそうドラゴンに伝えている。まあ、嘘だったのでドラゴンも苦い笑いで返す。
「お前が政府に連れて行かれそうだと、風の噂で知ったものだからな」
「……相変わらずお前の身の回りの"風"は便利だなぁ。ギルテオは要らないんじゃないか?」
ナマエがからかい混じりに部屋でセンサーを弄っていたギルテオに目を向ければ「うるさいぞナマエ!」と言ってペンのキャップを投げて来た。避けきれずに額にそれが直撃する。「うおぉぉ地味に痛い…!」相変わらずどんくさい男だ。気候――雨を自由に司る強力な力を持った能力者とは到底思えない。
「……敵討ちのつもりだったか?」
「…!……まー、そんなことも考えてたけどなあ」
「…」
くまの敵討ちがしたかった、とナマエは答える。
だがそれも、確固たる意思ではなかったんだろう。半ば自暴自棄になっていたと自覚がある分、ナマエもドラゴンの前で萎縮している。軽率な判断だった、と。
Dr.ペガパンクの手によって"バーソロミュー・くま"と言う一個体の人格を失ってしまったくまのことは残念だった。それによって海軍――世界政府はまたより一層の力を手に入れたことになる。それは革命軍にとっても大打撃だったが、ナマエからすれば、それはとても哀しい別れだった。
「…くまのみならず、お前まで政府に落ちてしまえば奴らはどんなに強大な力を手に入れることになるか、は分かっているのだろう?」
「……分かってるよ。悪かったって」
その力を使えば豪雨だろうと雷雨だろうと台風だって作り出してしまうナマエの力は、この海が主体である世界において非常に強力な力だ。その気になれば幾ら大きな船でさえも一瞬の内に沈没させてしまうことが可能で、本人にそんな気がなくとも他はそれを欲しがっている。
それを知っているからこそ、ナマエはひっそりと今までの人生を過ごして来ていたのに
「……くまを想った上での行動だったと言うことは分かる。だが気をつけないとお前もくまと同じような目に遭わされることになるんだぞ」
「分かった、もう分かったって。お前は俺の父ちゃんか。寡黙なくせに口煩いぞ」
「暫くはこの基地に滞在していろ。頭が冷えるまでで構わんから」
「…お優しいことだ。んじゃまあ、お言葉に甘えて」
おいギルテオ、これ返すぞ。
額に当たったキャップをギルテオの後頭部に向けて振りかぶった。「いてぇっ!?」「ははははは」「ナマエー!」賑やかに話すナマエとギルテオの姿を眺める。
ナマエも昔は、もう少し明るかった。寡黙なくまの相手をしていたから、それはより顕著だったが
今はもう、あれ以上のものは引き出せないのだろうな
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