▼ ロー
! 64万企画作品
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ローが眠っている。
ソファの上で、長い手足を投げ出したまま、ぐうぐうと。
あのトラファルガー・ローが、と誰しも思うだろう。
ドフラミンゴ邸宅内で自ら意識を手放すような真似は決してしない。
だが言った相手がナマエだった。そしてナマエはローにお願いをした。
ローが思わずたじろいでしまった程饒舌に喋り、珍しくも彼に懇願をしたのだ。
「目の下の隈がまた酷くなっている」
「お前の寝不足が心配だ」
「少しの時間でいい、休息を摂ってください」
「安心しろ」「この部屋には俺以外の人間は、誰も入れないから」
ナマエに仄かな想いを抱いているローにとっては甘美な言葉の羅列であった。気を許すまま、素直にその言葉に従い、「なら、」とローが眠りに就いたのが15分ほど前のことである。
それから15分の間ずっと、ナマエは一秒も欠かさずにローの寝顔を見つめていた。
「……ふ、…ふっふ、ふ、………っ、…」
笑いながら。
可笑しい。本当に可笑しくてたまらない。
ナマエは 己と、敬愛しているドフラミンゴにしか知られていないが、重度の笑い上戸であり、酷く性根の捩れた性格をしている。そしてこれもまた自覚済みだが、己がとても「下衆」であることも知っていた。なのでナマエの眼に映って入る「ローからの愛」ほど、今笑える題材はなかった。
一体ローは、ナマエのどの部分に心を許してしまったんだろうねぇ?
ナマエはヘラヘラ笑いながら、そう言ってローの胸倉を掴んで揺さぶりたい衝動に駆られている。
ねぇ、どんな気持ち?ねぇ今どんな気持ちでいるわけ?俺みたいな下衆野郎のどこを好きになったのか教えてくれないか?俺はローのことなんてちっとも好きじゃないんだけどさお前は違うんだよな俺のことを好きになったんだろうなあ教えてくれよ人を好きになるのってどうやればいいのかさぁああ本当おかしいローみたいなのでも恋ってするのにどうして俺は出来ないんだろうねまあそりゃそうだよな俺みたいに人間が嫌いで他人のことなんて海中で動いてるわかめぐらにしか見えてない野郎にそれは無理な相談って奴だよなあああ
「…………ナマエ……、…」
「……ぶはっ!!」
いけない。笑い声をつい抑え切れなかった!
だって急にナマエの名前を呼んだローがいけないのだ。
一体どんな夢を見ているのか、ローの口元がムズムズと動いている。
無防備なあどけない表情が、どんどん緩んで行き………
ナマエは腰掛けていた椅子から立ち上がった。そして素早く部屋の外に出る。
あれ以上部屋にいてローの寝顔を見ていれば、危なかった。
抱腹絶倒。我慢して顔の表情筋を締めなければ、すぐにでも笑い声を上げてしまって、ローを起こしていたことだろう。
思わずナマエの名を呼んでしまったぐらい、ローにとっては"良い夢"を見ているのだから、起こしてしまうのは
大丈夫だよ、ロー。あと15分は、こうして扉の前で誰も来ないよう見張っていてやるから。
だからそれまでは、ゆっくりとお休み ロー………
「………フ、フフ、…フッフッフ……」
ああ俺、やっぱり笑い方がドフラミンゴ様に似てきたよなぁ。移ったのかな
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