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▼ クロコダイル

*使用人主/主従




長時間書類と格闘しておられた主人の手は凝りに凝っていることだろう
日が傾くにつれ、主人の書き物をする手が固まっていくのが見て分かる
「一休みされてはどうですか」ナマエの主人――クロコダイルの今やっている事を第三者が止めたとして、それを赦されるのは今のところナマエだけだと言ってもいい。命令するな、と言いたげなクロコダイルにめちゃくちゃ強面な表情で睨まれたってナマエは気にしない。これ程のことでクロコダイルに殺されるなら、とうの昔にナマエは500回は死んでいる




「……書類は後どれ程残ってる」
「もうとっくに今日の分は終わってますよクロコダイル」
「…なら何故早く止めねぇ」
「申し訳ありませんでした」



持っていた万年筆を乱雑に散らばる書類の上に放る
首を鳴らし、酷使していた右手をじっと見つめる。ナマエがクロコダイルの鉤爪の汚れを拭っていると、黙って今まで見ていた右手をナマエの前に差し出してきた
クロコダイルがナマエにやってほしいこと。もう何度となくやってきたことだ、熟知している
軽くお辞儀をしてその右手を受け取る。事前に用意していた蒸気の出ている温かいタオルで包んで、タオルの上から硬く凝り固まっている手を揉んでやる



「………――」



鼻から息が抜けるような、静かな溜息を吐いて椅子の背もたれに身体を預けるクロコダイルを見る
主人は今日はこの後すぐにお休みになられるだろう
寝間着の用意は済んでいるし、ベッドメイキングは昼の内に完了している
主人の就寝を見送った後は、邸内の掃除、バナナワニのブラシ掛け、夜食をやり、観葉植物への水遣り、そして明日の朝にコックに作ってもらう予定の料理の材料を確認し用意しておく。



「クロコダイル、明日は朝には何の予定も入っておりませんが、何時起床予定にされますか?」
「あー………任せる……」
「畏まりました。あと明日の朝食は普段通りのメニューでよろしいでしょうか」
「まかせる………」
「畏まりました。それと………、クロコダイル?」



右手のマッサージの最中だが、主人は眠りに入ってしまったようだ
タオルを剥がし、左手の鉤爪を静かに抜き取る。上着とシャツを手早く脱がし、寝間着を着せる。「…ほっ」相変わらず重く大きな身体だ。抱き上げるのにも一苦労。もう少し身体を鍛えなくては



耳元の傍で聞こえてくる主人の寝息にナマエは小さく微笑み、迷いない足取りで寝室に向かうのであった





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