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▼ シャンクス

*船員主/死ネタ






敵海賊船と交戦中に、船長庇って船から投げ出されて海の底で溺死した男の話って知ってるか?知らないか。それ、俺のことな
今から10数年ぐらい昔の話だから、若い奴らは知らんのだろう。
この世の色んなもの全てに未練タラタラなままで死んでいったものだから、俺はうっかり幽霊となって化けて出ると言うスキルを見につけたんだ。だから今、船長も副船長もクルーも誰も知ってはくれないが、俺、ナマエは化けてレッドフォース号に住み着いてる。だーれも気付かないから誰にも怒られない



海の底はとても暗く冷たいのです。どん底まで落ちて死んだ事ない人には分からないかもしれませんが、恐ろしいほど寂しい場所です
生前は、あんなに多くの人間に囲まれ楽しく生きてきたのに、
死んだら独りぼっちで嘆くばかり。ああ、どうしてあの時俺は船長を庇って海に落ちたんだ


船長を庇ったことに関しては後悔なんて微塵もしてません。ただ、その後に足を滑らせて甲板から下に落ちたのがいけませんでした。波は大荒れ、風は強風。落下した俺を助けようとしてくれた副船長もクルーも、海の荒れ模様の前には足を動かせなかったのでしょう。いかに屈強な海の戦士と言えど、怒り狂う海には勝てないのです
あそこで俺が足を滑らさずに甲板に倒れ伏せば、その後に待っていたのは
庇ったことに対しての怒りと、庇ってくれたことへの感謝を言ってくる船長と
無事で良かったと笑ってくれる副船長と
バカ野郎!!と泣きながら心配してくれる仲間たちと
素晴らしい医療技術を持ったうちの医師の手厚い治療だったはず



そう、俺の足腰の鍛えが足りず、無様に転んだ俺の責任。辛くもなるさ











「船長、外は大嵐だ。早く船内に戻るんだ」
「ああ……」
「……荒れた海になると、アイツのことを思い出すのはやめるんだな」
「忘れたくないんだ。大事な仲間なんだぞ」
「分かってるさ。だがな、思いを馳せたって死んだ奴は帰ってこねぇんだ」



船長、船長
俺、ここにいるんですよ船長、ずっと前から、貴方の隣に
そっちじゃない。あんな暗くて冷たい海の底になんかいません。
俺はここです船長 ここにいるんです

どうして見てくれないんですか船長






う、うわああああ、あああああああああ






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