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▼ シュライヤ

*同業者主/友情





「シュ、シュライヤお前……その子……」
「ああ。前に言ったと思うが、この子が俺のい…」

「隠し子!?」
「ちっげぇよ!」






シュライヤの華麗な踵落としをナマエが脳天に喰らって気を失ったのがおよそ1時間前
いつもナマエに対しては手酷いツッコミしかして来ない奴だシュライヤは
イテテテ…と唸り頭を押さえながらも身体を起こせば、ナマエを真正面からじーーーっと見つめてくる幼い少女。確か、気を失う前にチラっと見たような……



「シュライヤの………」
「………」
「………いもうと」
「そうだよナマエさん!」
「お、おう?お嬢ちゃん、俺の名前知ってたのか?」
「うん、お兄さんからココに来るまでに聞いたんだ」



同業者兼友人兼同居者のナマエって!
お嬢ちゃんの言ったことは全部本当だ

ナマエはシュライヤと同じく賞金稼ぎ。だがそのターゲットは海賊ではなく、もっぱら陸。山賊を相手にするものだ。海賊が世に蔓延るこの大海賊時代。掛けられる懸賞額は海賊ほど高額にはならない山賊たち。だがナマエは山賊を狙う。その理由はたった1つ



奥のキッチンに消えていたシュライヤが、3つのマグカップを持って姿を現す
その目が、ソファで身体を起こしているナマエを見てニヤっと笑う


「気がついたかナマエ」
「シューラーイーヤァア、てめぇいつも殺す気で俺にツッコミ入れてきてんだろ。手に持ってるそのコーヒー寄越せ」
「お前がバカなことばかり言うからだろ。人の話は最後まで聞きマショウ。このコーヒーは元々お前に淹れた奴だアホ」
「テメェの敬語クソムカつくからやめろユーモアがない奴だ。うん久しぶりにお前のコーヒー飲んだが美味い」
「ああそうかよ」



ほらアデル。熱いから気をつけろよ
うん


目の前で交わされる会話に、ナマエはマグカップの縁に口を付けながら、隠れるように笑った
アデル―――それはいつだったかシュライヤに教えて貰ったシュライヤの実妹の名
アデルと呼ばれる少女は、少しボサボサの髪の毛と身体のアチコチに擦り傷、火傷をして水ぶくれになっている手をしている。この年頃の女児がしてていいキズではないが


シュライヤの素性も過去も目的も何もかもをナマエは知っていた。家を貸すようになってから、幾月かしてシュライヤ自身が教えてくれた。
復讐。そんな悲しいことをするもんじゃない、とはナマエは言わない。各々の生きる目的と誓いを他人が否定してしまうもんではない。
ただ、ここ一週間、俺の家兼おれ達のアジトに帰って来ないから心配していたと言うことはシュライヤにも知っておいてもらいたい。飯を作っても食べ甲斐がないし、コーヒーが飲めないし、話仲間もいなくて暇だった。まあでも、とんだ朗報を持って帰って来てくれたけれど





「――ってーことで、これからはアデルも厄介になるから」



ニコヤカ笑顔のハンサムが笑う。モジモジしているアデルの肩を抱いて


そーかそーか。アデルちゃんも一緒に住むことになるんだな。いやあ女の子がいるとうちも華やかになりそうだなぁ。やっぱり兄妹は一緒にいないと駄目だなぁあははは



「ってうおおおいいつの間にそんなことになったんだよ!!別に良いけどな」
「良いんだろ」
「よ、よろしくお願いしますナマエさん!俺、ちゃんと働くから!」
「え、い、いやアデルちゃん。そんな気遣い要らねぇんだよ。そしてなぜ一人称が俺?」



疑問を持ったナマエに、シュライヤはハー…と溜息を吐き、
ナマエの隣のソファに座った。不機嫌そうな溜息だったが、なぜか顔は笑っている



「この一週間のこと、話すと長いぞ」



そう言うシュライヤは楽しそう



「話せよ。一週間分全部話せ」
「はいはい。お前のその欲張りなところはよーく分かってるよ」
「だって悔しいじゃないか。俺の知らないお前の一週間があるなんざ」
「………お前のそー言うところ……」
「は?」
「なんっでもねーよ」
「変なシュライヤだな。 おいでアデルちゃん。お兄さんの膝の上にお乗りなさい」
「え…いいの?」
「駄目だ。せめて俺とお前の間だ。来いアデル」
「は、はい!」
「ケチだなお前」
「うるさい」



でも、俺とアデルちゃんとシュライヤが並んで座ってるこの感じ、なんか良い。とナマエはニヤニヤ笑う。決してアデルが可愛いからだとか、そんなことはない



暫くはこのままで、シュライヤの旅話に耳を傾けるとしよう。コーヒーお代わり








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