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▼ ミホーク?

*管理人主/友愛





近隣の島まで食糧を調達しに行っていた間に、このシッケアール城に何が起きた。
夥しい数のヒューマンドリル達が地面に倒れているではないか。身体のアチコチには惨い切り傷が付けられている。城を留守にしていた間にミホークが帰って来たのか?そしてミホークの奴が気まぐれを起こしてヒューマンドリル達を殲滅させたのか?まさか。どうして奴がそんなことをする



まだ動ける奴もいたのか、飛びかかってくるヒューマンドリル達を最小限の動きで躱し、躱しきれなければ殺し、全速力でシッケアール城に戻る。途中何本かワインを落として来たような気がするが、拾いに戻ってる場合じゃない



「ミホーク!!」



趣味の悪い豪奢な飾りをした大扉を開けば、正面に設えたソファにミホークがふんぞり返っていて、「帰ったか。早く飯を用意してくれ」なんて言う。その相変わらずの我侭っぷりにナマエの青筋がヒクヒクと痙攣を起こす



「ミホーク!突然帰って来る時は連絡寄越せと何遍も言っているだろうが!!」
「ならば私に伝書鳩を持たせろと何度も言った」
「莫迦か!そんな鳩買う余裕がウチの城にあると思ってんのか!」
「そうだろう」



お前が獲物を選りすぐらずに賞金首狙ってさえ来たらこんな極貧生活強いられてねえんだぞ!シッケアール王国城の前の王の使用人をしていた男の息子であるナマエの最もである言い分にミホークは耳を貸さない。飯はまだかと催促し続け、黒刀の手入れに余念がない。ナマエは久しぶりに頭痛がした。ミホークがこの城に帰って来るとこうなる。打ち捨てられていたシッケアール城を、ミホークが拠点として使うようになったのは一体いつだったか。
使用人として度々この持ち主を失くした哀れな城を見に来てやっていたナマエが、ミホークの代わりにこの城の留守を任されるようになってからと言うもの、ナマエの気苦労が絶えなくなった
もういい。このままミホークと話し合いをしても、埒があかない事は熟知している
買ってきた食材の入った紙袋をキッチンに運ぼうと足を動かせば、そのキッチンから先客が出てくる



「……ん?」
「………どちらサマだ?」



右手にナマエが保管していた酒瓶を持って出てきた緑髪の男。帯刀している。
強面な人相の男で、纏っているオーラは常人でないことが窺える。それでもナマエが平然としているのは、この男をミホークの客人だと思ったからだ
ミホークがここにいるのに、賊の侵入を許すはずがないと言う些末な信頼心だった



「その男ともう1人、この城で面倒を看ることになった」
「…お前が、誰かの面倒を…看る?」
「成り行きだ」
「なりゆきって……もう1人、だと?」
「そちらの者の方がより成り行きに近い」



先ほどナマエが入って来た大扉に人の影が浮かんだ。
緑髪の男から視線を外し、そちらを見やる



「あぁああもうほんっっとにあの猿共うっぜぇ!!死にぞこないのくせにタテついてくんなよな!!!あと道にワイン落ちてたけど何だよコレ!拾っておいたぞ!!」







「もう1人って女の子か」
「そうだ。途端に明るい顔をするな」



口が悪い、室内なのに傘差してる、何か霊魂みたいなのが見えると諸々あるがこの際は置いておこう。なぜならナマエは女の子に目がない。目が個性的であれば尚特に良し



「ありがとうお嬢さん、君の手によって拾われたワインの何たる幸福なこと…」
「はあ!?何だコイツキモイ!!」



傘で殴られてしまい、ナマエの身体はそのままの姿勢でソファに腰掛けていたミホークの隣に突っ込んだ。顔面から行ったナマエに見向きもせず、ミホークは愛刀の手入れの仕上がりを確認している



「45の男が自分の身の丈より低い女に吹き飛ばされるなど哀れ極まりないな」
「黙れ。飯を作ってやらんぞ。後あの2人の名前は何だ。呼べんだろうが」
「………本人共から聞けばよかろう」
「それもそうだ」



それから2人の名を聞き出すのに大分時間を食ったせいで、夕飯の支度が遅れた。空腹だったミホークに詰られたが、そんなことよりもゾロとペローナ(名前まで可愛い)なる2人が海賊で、しかもゾロってあの麦わら一味のゾロじゃねぇか!と気付いたのは夜、ソファで寝そうになっていたミホークを寝室まで担いでやっていた時だった





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