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▼ キッド一味

*賞金稼ぎ









このご時勢に山賊狩って賞金稼ぎ?非効率的だねぇお前は。俺を育ててくれた偏屈婆さんは口は悪いが世渡りを知っている。老体のくせに何処から稼いで来るのか、18になるまで捨て子赤子だった俺を養ってくれたその力は唯一賞賛に値する。このご時勢と婆さんは言うが、このご時勢だからこそだ。世は大海賊時代とは謳ったもの。世の賞金稼ぎは我先にと名のある海賊の手配書を集めている。が、俺は違う。そんじょそこらの奴らとは目の付け所が違うんだ。皆海に行くなら俺はその逆を行こう。山賊だって、立派な犯罪者だ。俺を捨てた母親の女性は、暮らしていた村を山賊に襲われたせいで生活苦の為に俺を捨てた。弟もいて一緒に捨てられたらしいけど、まだ赤ん坊だった弟は逃げていた途中に山賊に攫われて行方が分からないと聞く。そう、山賊だって悪だ。小金だろうが額とか関係ない。俺は山賊を狩る。狩って稼いでついでに弟の行方を捜す。生きてたら良いし死んでたって別に構わない。そんな生活を18から続けて10年と2年










「おおユースタスの。元気にしてるか?今回もまた廃品回収か」
「久々に会ったのにウルセェなテメェは。人を何かの業者みたいに言うな。これも貴重な資源だ」
「俺は海賊は好かんが、お前たちは山に不法投棄された鉄屑を持ってってくれるから気に入ってる」
「オッサンに好かれたって何も嬉しくねーよ。邪魔」



1年に一度会うか会わないかの確立で出くわすキッド海賊団と、海ではなく山で出会うことも別に驚くことじゃない



山中にどこかの莫迦が捨て置いて行った鉄塊や銅版が、見る見るユースタスの右腕に集まって行くのを見て、たまの事だがほう、と関心する
山賊で悪魔の実の能力者と言うのは少ない。普段から山賊を相手にしているから、こうして能力を目にする機会は無いに等しい。と言うより、未だかつてユースタスの能力以外見たことないのだが、





「………悪いな」
「ん?…ああ、キラーのか」




豪快に鉄を引き寄せているユースタスを、通り道なのに邪魔だと思われていると思われたのだろうか。ユースタスの背後に控えていたマスクの男――キラーは、声だけですまなそうにしている。気にすることはない。たまに能力者の力を見て、驚きと新鮮さを忘れさせてくれないのは良いことだ




「気にすることはないさ。アンタ等も、海から遠路遥々こんな山中まで足運んで、ご苦労だな?」
「そうでもないさ、鍛えてるからな」
「そうか」

「…ナマエは、今はどいつを狙っているんだ?」
「ああ、この山を1つ越えた崖に根城ってる奴らだ。数は多いから厄介そうだがな」
「そうか。 まあ、気をつけろよ」
「どうもどうも」



マスクで顔は見れないが、心配してくれる声は真摯だからナマエの中でキラーの好感度は高い。海賊なのが勿体無いぐらいの武人だ。マスクからはみ出しているモサモサの金髪も、自分と同じ髪色だから親近感も湧く。昔聞けば、こう見えて?年下のようだし





「大量だ」
「大量だなあ。またブリキの玩具でも作るのか?」
「もう作らねぇよ!アレはお前が俺の力を見てみたいとか言うから見せてやったんだろ!」
「ああそうだったか。アレは精巧な作りだったから、今も自宅に飾ってるんだ」
「そ、そうかよ」



自分より大男だが、年が下のせいでたまにユースタスのが弟に見える時がある。まあ、俺の探している弟より年齢差があるから、違うんだけれど

ナマエとユースタスの2人を見ていたキラーが、そう言えばと声をかける



「ナマエ、弟探しは1年前より進展あったか?」
「そっちはサッパリだな。まあもう何十年も前の事だし顔も覚えてないし面影もないだろうから、こっちはもう諦めてるよ」
「そうか…だが、見つかるといいな。折角ずっと探しているんだし」
「まあな。見つからなかったら、探してた期間が無駄になるしな」
「そうだ、その意気だ」


「…でもそう言うんなら、キラー。お前も昔は捨てられ子だったって聞いたぜ」
「ああ、そうだが…」
「え、キラーのお前も捨て子だったのか?」
「赤子の頃だったからな、記憶はない。幼少時代も普通に育てられてきたし」
「へぇ…そうか、お互い苦労するなあ。でも今日びまで生きて来れててハッピーだな」
「まあな」
「俺の弟も、元気にやってりゃあ良いんだがな」
「どっかで野垂れ死んでるだろ」
「そうかねー」
「キッド、言葉は選べ」
「ウルセェ」




世間話は終わり、帰るぞ。ユースタスのが号令を掛け、近くにいた船員達を集める。キラーもそれに続こうとし、一度だけナマエの方を向く



「…ナマエ」
「んん?」
「お前、出身は南の海だったな?」
「そうだぞ。20の頃に飛び出したっきりだけどな」
「俺も、同じ出身なんだ」
「へえ…?」
「………」
「…?」

「…まあ、だから"何だ"と言うわけじゃあないがな。失礼する」
「おう、またなキラーの。それとユースタスの」
「おー」




見送った数人の背中と鉄塊が見えなくなった頃に、漸くナマエは歩き始めた。山賊狩りが本業で、弟探しはあくまでもサブなのだが、数年前に初めてキッド海賊団の面々…主にキラーを見てから頭の中がどうもモヤモヤとする。
年齢差が同じで、同じ髪色で、同じ出身で、似た境遇……




まあ、確かめる術がないから分からないことだ





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