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▼ レイリー

*元船員/友情





「ようレイリー、久しぶりだな」

「あぁ、ナマエか。 相変わらずへちゃむくれた面白い顔をしてるな」
「会って三秒で俺への悪口とかお前こそ相変わらず捻くれてんな」
「何を言う。愛嬌があって他よりも特徴的なお前の顔は、結構好きだぞ」
「遠回しに不細工って言ってんだろ。もう良いよ、 シャッキー。いつもの酒売ってくれー」
「はい、10万ベリーだよ」



明らかに値段と量の割に合ってない酒を出されてもナマエは気にしない。それを払えるだけの金を持っている男だ。自分よりも仲間よりも船長よりも金が好き。金を集めて使うのが大好き。ナマエと言うのは昔からそう言う男だった。ロジャーの船に乗っていた時から、宝番のくせに金遣いが荒かったか、


若かりし頃は性格の不一致で喧嘩も小競り合いも起こしたけど、年を取ってからは落ち着いたものでシャクヤク曰く「陰険な罵り合い」ぐらいしかしなくなった。生き残り同士二人、肩を並べて酒を飲んだって海軍からのバチは当たらんだろう



なんてレイリーが久方ぶりに会うナマエについて思考を巡らせていると「…!ゲホッ、ゲホゴホッ!」カウンターに座っていたレイリーの一つ空いた席に座ってボトル酒を煽っていたナマエが気管に詰まらせたのか思い切り噎せていた

「おやおや」年は取りたくないなぁナマエ?とレイリーが茶化せば、「煩い」と返す。恥ずかしいところを見られ不機嫌になったようだ



「しかし、今日はどうしてシャボンシティに?」
「ああ、新しい使用人を買おうかと思ってな。人間オークションに行く途中だった」
「またか……人としてあまり恥ずべき事はするなよ?」
「俺を下衆な天竜人達と一緒にするな。ただ単純に使用人が欲しいだけだ」


新世界に居を構えているナマエの家は広い。なのに家主はこうして度々船に乗って出歩くものだから家を守る人間がいる。しかしどうせ雇うなら人間オークションや人間屋に捕らえられてしまった哀れな者たちを買い取って、助けてやっているのだ。臆面にはそんな事言わない奴だが、レイリーは分かっている。ナマエのそう言う不器用なところをレイリーは好んでいる


「しかしなレイリー お前もあまりGR1とか2とかをフラフラするんじゃないぞ」
「何故だ?」
「見た目はただのジジイなんだから、お前ももしかしたら攫われて人間屋に売られるかもしれないだろう」


空になった酒瓶を置いて、シャクヤクに追加を頼んでいるナマエの顔は真剣…のように見えた
天竜人も最近よくこの諸島に足を運んでると聞いたのだろう、それで、不器用ながらに心配をしてくれているようだ


ナマエが受け取った追加の酒を横から奪い取り、手近に置いてあったグラスに注いで渡してやる。「あのなレイリー、たまには友の忠告を素直に聞き入れたらどうだ」なんて柄にもないことを言うナマエに、レイリーはクツクツと笑った



「しかしなあナマエ」
「なんだ?」

「もし私が攫われ人間オークションに売られたとしても、だナマエ」
「あぁ?」


「お前が、私を買いに来てくれるだろう?」


「……俺に、いつもお前が攫われていないか売られてないかの確認を怠るなって事か」
「老いぼれ1人買うぐらいの金はお前さんのことだ、腐る程あるんじゃないのか?」



グラスに注がれた酒を飲み干してニヤニヤと笑えば、ナマエは金に関してのプライドは傷つけられたくないらしく、当たり前だ!と乱暴にグラスの中の液体を飲み干す。あまり打ち付けないでおくれよ、とシャクヤクが離れた場所から怒っている



「まぁお前が売られていようが何されていようが構わんが、俺がお前を買って助ける以上は、例え"冥王"と言えど ナマエ家の使用人として身体を壊すまで家を護ってもらうからな」
「ははは、その言葉だけ聞くとお前さんの女房になったみたいだな!」
「戯言言ってろ。大体、お前が容易く人間屋の奴に捕まる筈がないか」
「それもそうだな」



そんな話はここで終わるとしよう。これからナマエとの飲み比べをする時間なんだ。


一興の前の歓談程度の種にはなったこの笑い話、
レイリーがナマエに言った言葉は本心だ。レイリーはナマエを好いている。たとえ顔がへちゃむくれで、金にガメつくだらしなく、己より仲間より船長よりも金が大切だと言っていようと、


「金の次くらいには、レイリー
お前が大切だと、稀に、一瞬、ほんの少し、そう思う」



遠い昔にナマエが言ったこの言葉を レイリーはいつまでも覚えている






なにも言わない、
     そんな2人









「……あんな話をしてはいたが、本当に売られる奴があるかレイリー!!」
「ははは、やはりお前さんは助けに来てくれると信じてたよナマエ」
「老体に鞭打たせるな!それにお前1人で充分なんとかなる相手じゃないか!
あとこの会場は何故こんなに海賊で溢れかえってる!!それに麦藁の男までいたが?!」
「色々言いたいこともあれば気になることだらけだろう?お前もBARに来い、ナマエ」
「金の匂いは微塵もしなさそうだがな……」







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