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▼ 子マゼラン

*使用人主/主従









黒色の温かなコートを持って広い庭園を探せば、探していたその小さな背中は、花壇の傍で小さく項垂れていた
わざと音を立てて近付けば、涙目の顔がこちらを振り返る。一言名前を呼ぶ



「マゼラン様」


「あ……ナマエ……」


「そのような所におられては、お風邪を引いてしまいます ナマエと屋内に入るか、此方の召し物を着てくださいな」
「……うわぎ 着る」
「はい」



肩に持参してきた上着を乗せれば、もぞもぞと袖を通すマゼラン様を見て、次にマゼラン様が今まで見ていたモノに目をやる
そこにあったのは、今朝方までは平然と咲いていた花壇の花が、無残に朽ち果てている場面

またか、とナマエは喉の奥で溜息を吐く




「マゼラン様 よろしいですか?ナマエは以前にもお伝えした記憶がありますが、再度お伝えしておきます」
「……うん」

「マゼラン様はまだ幼く、悪魔の実の能力も十二分に使いこなせてはおりません。
闇雲に生きているモノには近付かれない事です。 マゼラン様が悲しむだけです」
「…だって、だって、ぼくだって、この花に、水を、やろうと思って、」
「……水やりならば私たちが済ませております。マゼラン様がお手を煩わせる必要は御座いません」
「……………」
「ナマエの言うこと、お分かりになって頂けましたか?」



主からの頷きは返ってこない。先ほどよりも多量の水を目に抱え、零れ落ちんとしている



「………だって、みんなぼくに近寄って、こないんだ」
「それはマゼラン様が偉いから皆萎縮しておるのです」
「うそだ! みんな僕ののうりょくがおそろしいんだ! 使いこなせないのうりょくを持つ超人系だから!みんな、僕がいきをするだけでビクビクするんだ!」
「ですから、それはマゼラン様がまだ使いこなせていないからです。大きくなれば、きっとドクドクの実の能力を意のままに出来ます」
「それまでの間に!みんな遠ざかっちゃって、たえられない!ナマエだって、本当はそう思ってるんでしょう?いやだって、思ってるんでしょ?ナマエも、『息すんなよマゼランのクソ野郎』って、言うんでしょ!?」
「誰ですかマゼラン様にそんな事を言ったのはナマエがブチ殺してきます」
「おち、おちついてナマエ!」



いけない、思わず頭に血が
腰を掴んで引き止めてくれたマゼラン様の小さな手を 僭越ながらギュっと抱きしめさせて頂く
ビクっと体を揺らしたマゼラン様が「放して!毒が出ちゃう!」と叫んでおられるが、ナマエは気にしませんマゼラン様 貴方様が悲しむぐらいなら、こんな手が爛れようとも



「ご安心くださいマゼラン様」
「ナマエ…?」
「私はずっと貴方のお傍についております。あなたはマゼラン様。ドクドクの実を食された、気高きお人です」
「……ぼく、気高い?」
「勿論で御座います。いつかマゼラン様がそのお力を使い、世に蔓延る海賊達を懲らしめる姿を ナマエはいつも夢に見ておるのですよ」
「ほんとうに…?ナマエは、ずっとぼくのそばにいる?」
「はい」
「……ぼくが、毒を操れるようになるまで、見ててくれるの?」
「当然です。いつかマゼラン様が、夢であられるインペルダウン監獄の署長になられるまで、ずっと」
「………うん、わかった。ぼく、強くなるよ。つよくなって、インペルダウンのしょちょーになる」
「はい」
「それでね、あのね、ナマエ」
「はい?」



握っていた手を放され、上から包み込まれる




「きずつけるだけのこの能力で、いつか、ナマエのことも護れるような、男になってみせる」
「……私を…ですか?」
「うん!」
「それは……とても、嬉しゅう御座います」
「やくそくね!」
「はい、約束ですね」



交し合った小指。マゼラン様の小さなその手から、もう毒は滲み出して来なかった



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