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▼ イゾウ

*船員主/友情





「男を弄んでるんだろう?って言われた」
「ドンマイ」

「家の掟で女人の格好をして男に春を売ってるって誤解された」
「ばくわら」




「おれは極めて普通の男なのに、どうしてそんな有らぬ噂が立つんだ!?男になんて抱かれない!おれは女人が大好きだ!」
「見た目のせいじゃね?あとお前のその格好で女好きって叫ばれてもな」





必死の形相でナマエの袖を掴んでいるイゾウの姿は、さめざめと泣いて男に縋りつく女人のようだ。それもこれも全部イゾウの見た目から来るものである。相談役となっているナマエも、何度と知らぬイゾウからの悩みにはもう飽きたようで、背を向けたまま今日の晩飯の魚を釣ろうと釣りに励む。特大の釣果を披露してやるとハルタに喧嘩を申し込んでいる最中なのだ



「口に紅引いてるから怪しまれんだよ。ただでさえ女顔なのに」
「てめぇ…人が気にしてることをヌケヌケと…」
「なら諦めろ。それか、お前のその曲がった美意識のせいで誤解が生じてるんだと気付け」
「コンプレックスの女顔を活かしてより自分の美しさを引き立たせようとしてるおれの美意識を否定するのかナマエ!」
「だから花魁って認識されてんだよお前」
「なに!?」



自分のコンプレックスをチャームポイントにしようとしたイゾウの結果がコレだよ。本人はただ自分を磨いてるだけなのにね。ちょっとその矛先がおかしなだけで



「まあ言わせておけばいいじゃないか。お前のことを"そんな風"に思ってるのだって、どうせ下っ端の奴らだろ?」
「…そうだが、鬱陶しいのだ。陰でコソコソと…」
「オレはイゾウのことそんな奴だって思ってないからさ」
「思ってたら眉間に風穴あける」
「うん。だから気にすんな。お前もこっち来て釣りしようぜ」
「……釈然としないが、わかった」



船縁に腰掛けていたナマエの隣に座ったイゾウは、着物の裾が肌蹴て男にしてはいやに白い足を晒したってどうも思わない。そんな事さえも気に留めないような奴が、根も葉もない噂を気にして泣かなくとも良いわけだ。所詮、本人にとっちゃその程度の問題だから




「見ろナマエ!カジキマグロだ!」
「カジキマグロ一本釣りするとかイゾウおっとこまえー」
「もっと言え!」




あとイゾウは「美人」と言われるよりも「男前」と言われる方が喜ぶ
付き合いの長さは認識力の差だ。イゾウは思っているより単純な男なのだ





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