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▼ くま

*雨男主/友情





突然だが、オレはよく雨を降らしてしまう。能力ではない。ただの行き過ぎた雨男だ。生まれた直後からそんな調子で、今まで太陽と言うものを見たことがない。空想上の産物ではないかと疑っている。
何処へ行こうと何時に行こうと砂漠に赴こうとも、いつもオレの頭上には大きな雨雲がノコノコとついて来る。ある国に1年滞在していた時は、『365日雨が降り続いた国・何かの前兆か!?』と新聞の見出しが大きく提示された。申し訳ないな、と思う反面、「知ったことか」と開き直ってしまっている部分もある。オレは別に善良な人間ではない。オレの無駄な力のせいで他人の暮らしを困らせようが、自分自身が困らないのなら構わないのだから。

ただ、目の前の友人の体が雨の影響で軋んだ音を上げるのなら、多少は罪悪感も沸くかなと言う程度の話で






「………、…」
「くま、キシキシ言ってるぞ。大丈夫か?」
「……雨如きで破損するような構造ではない」



そうは言うが、お前のその今の体には不用意に水を被らない方が良くないか
予備の傘を差し出しても、受け取らないコイツはいつも何がしたいのだろうかと思う
左手のバイブルにはしっかりとビニールを被せて保護してるくせに、肝心の自分は傘も差さずに頭から下まで全身ずぶ濡れだ。自分のせいで降らしてしまっている雨のせいで、友人がびしょ濡れになっているのを自分は傘を差した安全圏から傍観、って酷すぎる



「……もう全身やられちゃったのか?」
「…ああ」
「そうかー…」



昔のくまの体ならば、雨に濡れたぐらいでは軋んだりしなかった
Dr.イカレパンクに着手された鋼鉄の体では、水分の沁みこんだ関節が擦れ、錆びて軋む
こうなった今とあれば、一向に傘を差すことをしないくまに付き合って、てっぺんからずぶ濡れに濡れ、合羽常備の仲間達に「風邪引きますってー!」と怒鳴られていたことも懐かしい。もう今のお前とでは、そんな些細なことさえも楽しめなくなってしまった



「オレの巨大傘をやるから、これ差してくれ」
「……ナマエが濡れる」
「オレはいいんだよ。雨はオレと同体だから」
「ならおれも雨を拒否しない」
「どう言う意味だ?」
「いつもナマエと共に在る雨を、おれは遮りたくない」
「…でも濡れるのは不愉快だろうが。体壊してしまうって」
「雨は嫌いだ。ナマエの傍に寄り添う雨が、おれは憎い」
「………矛盾してるし、聖書の読みすぎだ。オレを君主か何かと誤解してるんじゃないのか?」
「おれの勝手だ」




海軍に召集された。もう行く。

二言告げて目の前からパッと消えた友人の姿を思い出して溜息を吐く。
妙な男に懐かれてしまったものだ。雨を降らして益を生まない只の陰鬱とした男なんかに、あの何を考えているのか分からない男が



ただ昔に、海軍からの集中砲火を受けて全身を焼け焦がしていた男に雨と言う名の水を与えて命を救っただけだと言うのに





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