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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ ドルトン

*夫婦





「あぁもうバカ!この大バカ者!」
「す、すまないナマエ、出来たらもう、叩かないでくれると、ありがた、」
「まだまだ足りませぬよこの程度のパンチでは!」
「ま、まだ足りないのか!」
「まだです!あなたと言う人は、妻に心配ばかり掛けて!お腹の子に響いたらどうするのですか!」
「す、すまない!!」



わあああああんと子どものように声を上げ、ドルトンの胸ぐらを細い手で掴んだまま泣き崩れた妻の肩を、夫は狼狽えながらも大きな手で支えた
冷え切っているドルトンの手は真っ赤に腫れている。顔も腕も体も、全て。顔の腫れは一部ナマエが殴ったことによって出来たものだが、その様子を認めたナマエは、また一層泣き声を強めた。大の大人になっても、夫の一大事には思わず童心に戻ってしまうらしい


「あ、あなたがワポルのせいで雪中に埋もれたと聞いた時も、心臓が止まりましたのにぃい」
「なにぃ!大丈夫だったかナマエ!」
「あなたの方でしょう!」


私の心臓が止まったと言うのは例えですよこの大バカ者ー! なに、例えだったのかすまない気付けなくて、 大真面目に返さずとも良いのですよ大バカ者!




一頻り罵り終え満足したのだろう、荒い呼吸を繰り返し息を整える妻の身体を、もういいかな?もういいよな?と探りながらもドルトンは、自分と比べて小さなその身体を抱き締めた。あぁ温かい。コートなぞ意味を成さんぐらいに、妻の身体はポカポカとしている


「ワポルは居なくなった。麦わら達がやっつけたから」
「…トナカイのあの子も、頑張ったのでしょう?」
「あぁそうだ。この国に、ようやく真の平和が訪れるんだ」
「…ふふ、素敵ねぇさっきの桜。あなたは間近で見ていたから知らないかもしれないけど、遠くから見るととても綺麗だったのですよ」
「そうか。ナマエが楽しかったのなら、私も嬉しいよ」



小さな妻は、夫の腕に抱き抱えられるのが好きだった。この子どもにするような行動は、いずれ自分のモノではなくなるだろう。このお腹の子が大きくなり、平和になったこの王国で笑顔を絶やさぬ事のない日々が、やっとやって来るのだ



「…きっと皆さん、あなたに王を、と願うでしょうね」
「……もしそうであるならば、私は全てをかけてこの国を豊かで平和な国にしてみせるよ」
「楽しみねぇ、あなたの統治する国」
「ナマエと、この子の為にもな」
「えぇ」


この王国の、春は近い


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