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▼ ルッチ

*科学者主






例えばナマエがカリファのような女だったならば。
あの冷血も多少は気にかけてくれるかと考えたが、物心ついた時から好きになる人はみな男で、女のように抱かれるのではなく男として男を抱きたいと考えているナマエにとって自分を女とするのは非常に納得がいかない部分であり譲れない箇所だった。
しかし問題は堂々巡り。マッドだと悪名名高いエニエス・ロビー専属の科学者であるナマエの頭脳を持ってしても、あの冷血無慈悲な男を振り向かせる方法が思いつかない。まず第一にあんな男に惚れなければ良かったのだが、それはもう一目惚れとしか言いようがないのだ。悪魔の実の研究として冷血――ロブ・ルッチを研究室に呼び寄せた時から、豹たる姿に心奪われてから眠れぬ夜を送ること早五年。研究が終了してからも、廊下で見かければ挨拶をし、ルッチが任務から帰還した日には、普段は出たくない外へも飛び出してお帰りを言った。それだけだ。特別なことは何もなかった。そんな日々を五年だ五年。本来の自分なら疾うに心変わりしている頃だろうに今回に関してはまだその兆しもない。ナマエは自分自身にほとほと困り果てていた



そんな折にナマエの許に飛び込んできたルッチに関する情報は、
ロブ・ルッチ始めカク、ブルーノ、カリファの4人がウォーターセブンに長期の任務に向かうと言うモノだった
今までも長期の任務はたびたび彼らに課せられていたが、その期間が数年単位のものとなることはなかった。なのでナマエは久しぶりに"焦り"を感じていた。

そんなの、寂しすぎる!!

心情は欲望に忠実だ





「ちょうかぁあああん!!どーっしてルッチをそんな長期任務に送っちゃうんですかぁあ!」
「うるっせぇぞナマエ!!なんでただの科学者風情のお前が長官であるオレ様に意見するんだ!」
「考え直してくださいよぉ!オレ、寂しさでどうにかなって長官の頭に肉ミソ詰め込んじゃいそうです!」
「やめろぉ!!やりかねんのがお前の嫌なトコロだ!!」



それにもう決定事項だ!今さらおれに泣き付いたって決定は変わんねぇよドアホ!!
至極真っ当なことをスパンダムに言い返されてしまいナマエのイライラはさらに募った
このクソスパンダムめ。顔がオレの好みでないことを末代にまで自慢しろ。とナマエは長官に向けて呪詛の言葉を吐き続ける。
あーあーあーなにもきこえねー、と耳を塞いで声で呪詛を掻き消しているスパンダム
そんな二人の空間に来客者があった



「……」
「――!」
「なんだお前か」



ロブ・ルッチ ナマエは分かりやすく喜んだ
廊下やエニエス・ロビーの外で会う以外に遭遇するのは久方ぶりのことだった

当然、スパンダムに用事があって長官室に訪れたルッチは、そこにナマエの姿があったことに訝しそうに眉を顰める。
そんな難しい表情でさえナマエにとっては動悸を早くさせてしまうのだから、ルッチの美しさまじギルティ と無意味にスパンダムの机を力強く叩いた



「何の用だルッチぃ」
「……いえ、明日の出発に際して、懸念事項等がないか長官に確認するよう上から申し渡されましたもので」
「そんなモノはない!」
「本当にないのか長官。めんどくさがってルッチ達に教えないとかだったら耳の穴から電磁針突っ込んでグリグリしますよ」
「地味でエグイことはやめろぉ!」

「………無いようでしたら失礼します」



あぁ!小競り合いを無視してさっさと退出しようとするルッチかっけぇ!と呆けていた自分を叱咤して、ナマエは去って行くルッチの背中に慌てて声をかける



「る、ルッチ!」
「………何だ」
「えー…、あー…」



気をつけて、早く帰ってこい、無事を祈る、いってらっしゃい、死ぬなよ、上手くやれよ

どの言葉をかけても失礼に値するような気がする、絶対に
ならば、と脳がひねり出したのはこんなチープな言葉






「 ――また、眠れない夜が来る」


「…!」




咄嗟

ルッチからしてみれば、とてもどうでもいい情報だったかもしれない。後ろではスパンダムの「…はぁ?」と言う間の抜けた言葉が聞こえる。
言ってしまってからナマエは後悔した。呼び止めておいてそんな言葉。怒らせてしまうだろうか、とルッチの顔色を恐る恐る窺うと、




「………ずっと、そうやって考えていろ」




あっちから、返事があった



ルッチが出て行った扉を呆然と見つめていれば、
長官に「……お前らなにをラブメロっちゃってんだよ気持ちわりぃ」と言われた。
今度スパンダムの料理に毒でも混ぜておいてやろうと思う


あと今のルッチの言葉はどう捉えていいものなのか至急誰か教えてほしい
さもなくば自惚れて手酷い勘違いを起こして痛い目を見るのはオレだからだ





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