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▼ シャチ

*船員主/両思い




「お前の嫁になる事も辞さねェ」
「いきなり何を言い出す」
「つべこべ言わずにおれを貰えー!」
「嫌だけども!? ――おい離れやがれシャチ!」




どうやらシャチが恋をしたらしいのだ。
それでオレに相談したいからと言われ、おおそうかそうか兄クルーに悩みを打ち明けてくれるようになったなんて、あの頃のシャチからは想像もつきませんなと笑ってドンと構えていたんだ。大部屋では話し辛いから、とオレの部屋に招きいれ、さぁ言ってみなさいと促せば、シャチの口からポツリポツリ零れる恋の悩みらしい言葉たち。「好き過ぎて、夜も眠れない」「食事も味がしない」「ぼんやりしてしまう」おお、おお…本当にそれらしい言葉ばかりだ。聞いている方までむず痒くなってしまうあの感じだ。シャチの一言一言に対しオレは真摯に答えたつもりだ。「夜寝ないとお肌ボロボロになって好きな人に良く見られないぞ」「ちゃんと栄養摂らないとガリガリになるぞ」他にもたくさん言った。
――たとえ、男所帯のウチで、シャチの好きな人とやらが出来たとしたって、オレは差別したりしない。安心しろ。オレはいつだってシャチの味方だ。
そう告げたら、だ。シャチがいきなり顔を上げて、「本当か!?ほんとーっに、そう思ってる!?」と言い出した。?となりながらも、本心だって伝えると、シャチはこんなことをオレに言いやがったのだ




「オレ、さ!その、好きなヤツって、お、おま、お前、ナマエの!こと!なん、だけど!」
「………………………そ、そうか」
「あ!!!さ、差別しないって、言ったよなぁナマエ!?」
「い、言ったけど!言ったけどもだろお前!!まさか、相手がオレなんて思うワケないだろ!?」



それからはずっと同じ調子で押し問答だ。冒頭のようなシャチの思いの丈をぶつけられ、伸し掛かられては成す術がない。ひんやりと背中が冷える。身体に悪そうな汗を掻いていた。拭おうにも両手をシャチに取られていて身動きが出来ない。馬乗りになったシャチに腹に乗られ、両手の自由を奪われてるオレって今すごくヤバイ状況か?もしかしなくても



「…掘るのだけは、勘弁したってくれさい……」
「ほ、掘らねェよ!ナマエに掘られはしたいけど!」
「なんっ!?」
「んなことより、ナマエ!!」
「お、おう!?」



奪われた両手の上からシャチの両手が被せられる。顔を真っ赤にして、どっか焦った様子のシャチは、すごく"恋するオトコ"状態で、ずっと自分のことを相談されていたさっきのことを思い出したのと、そのシャチの顔に釣られたせいもあって、オレの顔もきっと真っ赤っかだろう。さぞオモシロな状況だろう




「ナマエ、さっき"告白するなら相手の目ぇ見てガツンと言え!"って言ったよな!」
「…ああ言ったな……まさか自分がされることになるとは、露ほども知らなくてな……」
「相手の……目を見る………」
「……んん?」

「……ウワアアアアもうナマエなんでお前そんなイケメンなんだよおおおおお!見てられっかバカ野郎おおお!!!」
「うるさい!大声!迷惑!」



そうなのだ。実はオレも今ので久しぶりにシャチの目を見た気がする
普段からシャチは目深にキャスケット帽子を被っているし、オレの方がシャチよりも頭1つ半身長が高いせいで、船上で一緒に生活していても目を見る機会が無い
久しぶりに見たシャチの目は、相変わらずのブラックカラー そこにドアップに映っていたオレ自身とも視線がかち合って何か笑える




「ナマエはほんと心臓にわりィ……」
「…いや、何なのこの状況……もう告白する勇気がないなら手ぇ放して」
「す、する!放さない!」
「じゃあ早く言え!」
「あああちょ、ちょっと待って…!…って、え?ナマエ、おれに告白されてもいいわけ?」
「は?そこ?」
「…ハッ!まさか、言った後のおれを笑いものにするつもりで…!」
「んなこと考えてないぞ!? 誰も、駄目なんて言ってないし」



さっきからシャチ1人が大騒ぎしているせいだ。
お前ばかり盛り上がっているようで、
ずっとそれを聞いているオレがどんな立場だったのか




「まぁ聞かせてみなさい。絶対にお前の想いを笑ったり、嫌がったりしないと誓おう。 さぁ、言え」
「うー…ナマエがイケメンすぎる…つらい……なにこれ……」
「ほら、言えってば」
「ギ、ギブミータイム!」
「ノーユードントハブアタイム」
「す、好きだ!」
「うんありがとう」
「正直抱かれたくてたまんねぇ!」
「…そうか」
「こ、恋人にしてくれ!」
「いいぞ」
「やっぱダメ…… あれ?」
「ん?」
「いや、いま、あれ?」
「なんだ?」
「??」
「…?」






「………いいの!?」
「いいぞ?」







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