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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ シーザー?

*開発者/病み鬱













ええ、きっとあの人は気が触れてしまったのです





あの人はとても優しい目をしておりました。柔和に細められる目は見る者に安心感と温かみを授けます。トンテンカン、トンテンカン、と槌を鋼鉄に打ち付ける手は肉刺だらけでしたが、私はあの人のその温かい手が大好きでした。
勿論それは他の皆さんも同じでした


あの人が尊敬して止まないDr.ぺガパンク殿はあの人のことをたくさん「素晴らしい」と褒めるんです。その度にあの人はとても嬉しそうに笑うんです


あの人のことをよくない目で見ているDr.シーザーも、「素晴らしい」と言って笑うのです。でもあの人はあまり嬉しそうな顔をしません。だから私も、Dr.シーザーだけは好きになれないんです。よくない目をした人はきっとよくない事を考えてるんです




何よりあの人は、万物を愛します。今まで作り出してきた子たちをソレはもう愛するのです
そしてその子たちが戦場で、海上で、命を落とせば誰よりも悲しむのです。
あの人が最初から最後まで丹精込めて造り上げた、作品をあの人は「我が子」と呼ぶのです。そして私もあの人に「我が子」と呼ばれる内の1人でした。


もしも私に口があれば、あの人に「愛している」と伝えるでしょう
もしも私に手があれば、あの人の優しい手に手を重ね包み込むでしょう
しかしそれは一生叶わないことなのです
ただ我慢すれば過ぎることです






「……ぁ……ぁあ……」




暗闇であの人が呼吸をしているのが分かります。もうあの人は何日も寝ていません。きっと疲れています。休んでくださいね、って言ってくれる人が誰も近くにいないのだから、あの人は休むということを既に忘れているんです
今も、トンテンカン、トンテンカン 絶えず鋼鉄に槌が打つ音が聞こえます
私はその音に目を閉じてただ聞くばかり。耳はなくとも、音は聞こえるのです
私の耳は、あの人の全てをよく通す




「まただ……早く………殺さないと……」




俯けていた顔を上げたあの人が、フラフラと立ち上がって私の方へと歩いてきます。
その手には金槌と、バールを持って、迷いない足取りで


私はあなたに殺されます
でもしょうがないことです
生まれれば、死ぬのが当然ですから
私を造ってくれたあなたの手ずからならば、何の文句だってないのです
もし私に人間の体があるならば、胸を張って言えるんです
『間違いなくあなたを愛していた』のだと!













「……殺す前に……ころさないと………はぁ……つかれる…」

ナマエは重たい溜息を吐いた。吐いても吐いても喉に溜まって行く。終わりが見えない。
自分の手で作り出した兵器たちを一から壊して行く作業にも。いつになればこの行動から解放されるのか。しかし手を止めるワケには行かない。いつかまた、自分の兵器があのバカ科学者のような者の手に渡って、無辜の人間を殺してしまわないように自分の我が子を先に殺しておく必要がある


濡れ衣着せられ追い出された海軍研究所
剥奪されたライセンス
壊された居場所
復讐?もうそう言うのはいいんだ、疲れてるから




ただどっかの海のどっかの島でどっかの誰かにシーザーあの野郎が殺されてりゃいいなってだけの話で、


そうそれだけ







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裏設定@

・ぺガパンクやシーザーと同じ研究所に勤めていた科学開発者主
・造った兵器のことを「我が子」と呼ぶオブジェクト・セクシュアリティ(対物性愛者)
・元々毛嫌いしていたシーザーに自分の作った兵器を悪用され責任を擦り付けられた為に自分の作った我が子たちを壊す作業をずっと繰り返している


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