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▼ ヴェルゴ

*同僚主/片思われ





「知っているか」
人間の心と言うものは誰であろうと惰弱に出来ているもので、幾らその人が自分で完璧に心を殺した、何にも動じなくなったと思っていても心の方は全くそう思っていない。なに莫迦なことを言ってるんだこの人間はと鼻で嗤っているのだ。麻痺、凍結、その他諸々の理由のような自惚れは、人間の自己満足である。







本部への定期報告を簡潔に纏められて気分が良い。今回はG-5の面々も目立った悪行ーー海軍であるにも関わらずだが−−を控えていたみたいで、いつもより幾分大人しい報告に連絡係も「…以上で終わりですか?他には、」と戸惑い気味だった。


荒れ果てていると言う自覚はあるが、好き放題やっているG-5の手綱を握るのは一苦労。いつかちゃんとした上司を迎えれば、奴らも少しは落ち着くのかもしれないが



「 −−よう、ヴェルゴ」
「…ああ、ナマエか」
「本部の廊下でお前と会うのは久しぶりだな。 G-5での居心地はどうだ?キツい仕事ばかりさせられてねぇか?」
「今のところ問題ない。着任早々、基地長を任されそうではあるがな」
「本当かよ!相変わらずお前への評判の上がり様と言ったら他の奴の何倍だ?」
「そう言うナマエこそ、今度昇進すると聞いたぞ。おめでとう」
「よせよ、照れ臭い」



笑うナマエの頬に出来た笑窪を見て、ヴェルゴも薄い微笑を浮かべた。くっきりはっきりと、"笑った"ことが分かるナマエの顔の構造をヴェルゴは気に入っている。それこそ、階級の差と職場の違いにより顔を合わせることが少なくなった今も、ふと思い返してしまうぐらいに




ヴェルゴは耐え忍ぶ男だ
ドフラミンゴからの命令により海軍に身を置くこと早十年と少し
満を持すまで幾つ掛かるのか分からない時間を消費する上で、精神に"無"を用いることは少なくなかった。命令の為なら我慢も苦ではない。そう、苦であると思ったことはないしかしただ、





「……なあヴェルゴ、お前は賢いから知ってるんじゃないか?」
「何をだ?」
「七武海のドフラミンゴ……最近、アイツの動向が少し妙に感じるんだ」
「……例えば、どう言う風に?」
「アイツが闇の仲買人をしていると言う噂は有名だが、どうもやっている事が裏住人の中でも穏やかじゃない。"職業安定場"って、知ってるよな?あそこのオーナーが実はドフラミンゴなんじゃないかと思ってな…」



任務を遂行する上で、不必要なのはこう言うモノのことを指す
小さな火種はやがて大きな炎となる。それは、許されない存在であった




「……ナマエは、昔から勘が良くて柔軟な思考を持っていたな。おれは、お前のそう言うところを評価している」
「なんだいきなり褒めたりして。 お前はどう思う?ドフラミンゴをこのまま七武海の名目として置いておくままでイイと思うか?」



人の心と言うものは殺せないように出来ている。
殺せ、殺そう、殺さなければ、と思っている人間を、殺すことが出来ないのと同じように



「……あまりドフラミンゴの事に首を突っ込まないのがいいと思う。ナマエがどんな目に遭ってしまうか分からないぞ」
「て事は、ヴェルゴもあいつを怪しいと思ってると言うことだな?」
「いや…、ナマエ、」
「知ってしまった以上、放置出来ない性分でな。どうなるのかは分からないが、ドフラミンゴが良くない企てを目論んでいるようなら、俺は海軍として許さん」





「……やめてくれ……」
「ん?……何か言ったか、ヴェルゴ」





やめてくれ


でないとおれは、おまえをいつか消さなければいけないことになる









「殺せ、ヴェルゴ。お前なら簡単に出来るだろ?」
「ああ勿論だドフィ。おれは彼を殺せる」







…ああそうだ、




そう言えばおれは、彼を殺せないんだった



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