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*ドラゴン弟主











俺の家系の男たちは俺を抜かして交友関係とか、人脈的なものが広い。それは別にいい。俺と言う人間はモンキー家のコミュニティ能力を上手いこと引き継げなかったけどそれは大して恨んだことも残念がったこともないから。勤務先の会社の大勢の部下から慕われてる兄貴も凄いが、ウチの豪快な親父とも渡り合えるヒゲ面心は万年小学生のロジャーさんも凄い。あんなに綺麗なお嫁さんを見つけられて羨ましい。それに兄貴の嫁さんも結婚式に一度見たけどたまげるくらい別嬪だった羨ましい。そして親父のガープもまあまあ綺麗な母ちゃんを娶ったりして本当に羨ましい。三人の男が何故運よく美人と出会い結婚出来たのか。コミュニティ能力の差とかが理由だったら前言を撤回して俺は怒る。






「ナマエさーん!あそべー!」
「ナマエ車出せよー!山連れてけ!」
「うみ!海がいーい!」


「静かにしろこんのガキンチョ共!!」



蒸し蒸しと身体の水分とやる気を吸い上げていく真夏の空気に侵されながら、脳内で兄貴、知人、父親への羨望を赤裸々に語っていた俺のもとに、また今日も元気な坊主たちが来訪して来た。


クーラーも扇風機もない我が家に今、三人のガキンチョが居座っている。暑い。部屋の密度一気に増えた。揃いも揃って親の遺伝子満遍なく引き継いだ顔をした小学校低学年共は只今絶賛夏休み中だとのことで、こうして連日遊びに来るのだ。公園行けよ公園。人が毎日、お前らの足になってやると思ったら大間違いだぞ。



「かーえれ。今日のナマエお兄さんは忙しいんだ」
「タンクトップ、半ズボン姿で寝転んでるのにか?」
「いいか、エース。俺は今"婚活"中なんだ」
「…豚カツ??」
「違うエース、"婚活" 結婚相手、伴侶探しのこと」
「パン粉さがし??」
「揚げ関係から離れろルフィ」



そう。俺は今、三十路前にして絶賛婚活中なのだ!出会いがないなら飛び込めと言わんばかりの勢いで婚活中だ。これはゴロゴロしてるんじゃなくて連絡を待ってる途中なんです。無職じゃありません、今は夏季休業の煽りを受けて長期休暇中なんです。その辺分かってるんだろうかこいつ等は



「おれ知ってるよナマエさん。婚活って大変なんだろ?」
「まあ…楽ではないよな」
「おれもさ、毎日父親から女の子の写真見せられて『サボはどの社長令嬢の娘が気に入ったかい?』って強制的に婚活させられてるんだ」
「サボ君、サボ君。羨ましいことこの上ないぞ」
「でもさ!ナマエさんはいい男の人だから、きっとすぐに相手の女性が見つかるよな!」
「おぉ…!サボ君いい子だなぁ…!よし、アイス奢ってやる」
「えー!?サボだけずーるーいー!」
「おいナマエ!おれとルフィには!?」
「知らん知らん!」
「差別反対!」
「はんたーい!」



ぬああああ夏の蝉にも負けないやかましい奴らめ!!これは今後各自の親御からのお礼品を貰わないと割りに合わない子守り業だぞ!婚活の邪魔をしてくれるな!



「…でも婚活ってのが何か分かった。ようするに、女の人見つけて結婚したいんだろ?」
「すごく端折って言うとな」
「おれも分かった!マキノとかどーだっ?ゆーりょーぶっけんだぞ!」
「ダダンとかは?」
「マキノさんはもうすでに結婚して子どももいるだろ!あとダダンさんとかやめろ怖い」
「根性なしが」
「あ!?」
「子どもに怒鳴んなよー!」



まーまーまー!とサボ君が間に入って仲裁してくれなければ俺は小学生相手に黄金の右を振るってしまうところだった。でもエースは身軽だから多分俺なんかのパンチくらいなら軽々と避けるんだろうが…多分ルフィもサボ君も…なんだ最近の小学生のこの発育ぶりは…


「とにかくナマエ!海つれてけよー!」
「あーもー分かった、分かったから!引っ付くなルフィ熱い!」



結局最後は折れて車の鍵を手に取ってしまうんだ。ああ、早くこいつ等の夏休みが終わらないかな…おちおち婚活もできないぞ、全く。




「…おいこら兄貴 お前んとこの倅これから海連れてっけど何か問題ある?」
『いや。丁度いい、海の家でルフィに焼きそばを買ってやってくれんか。前に食べたがっていたんだ』
「……わーった」
『あとカキ氷と浮き輪も買い与えてやってくれ』
「……わーった」



「……あれ、ロジャー…さん、いないんですか?」
『こんにちはナマエさん。いまウチの人ちょっと飲みに行ってるのよ』
「え、こんな真昼間から…誰とですか?」
『昨日偶然知り合ったバックパッカーの方と意気投合したみたいで』
「相変わらずの相変わらずさ。…あ、どうですかルージュさん、今度俺と食事なんて…」
「子どもの目の前で人の母親誘うな!」
「あっ!勝手に切ったなエース!!」



「…で、サボ君の家にはいつも通り連絡入れなくていいんだな?」
「いいです。どうせウルサイだけなんで」


「よし、じゃあ行くぞガキンチョ共 ビーチの妖精たちと生足魅惑のマーメイドが俺を待ってるかもしれない」
「待ってねーよ」
「待ってるかもしれませんね」
「焼きそばカキ氷!」
「ピーチクパーチクうるさい!」



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