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▼ キッド

*友人主/現パロ








「あぁあ……アッヅァァアア゛………」



セミ。セミ。蝉。蝉。クルマ。車。近所のガキ。ガキ。そしてセミ。日本の夏って本当に喧しくて静かにしてくれない。毎年毎年忘れずに煩いし喧しい。でもこの何気ない小さなことも、日本が起こす不変の奇跡なのかなあ、しかし煩いぞセミ。だがテメーだけは駄目だセミ。求愛も大概にしとけ。仕舞いにゃ近所のガキの夏休みの宿題の観察日記の餌食となれ




 ――ガチャン バタン



「……ああぁ外ア゛ァッヂィイ……」




「いやアッヂィイじゃねーよキッドさま インターホンぐらい押して突入してきなよ」
「うっせェーなゴチャゴチャ。おれなんだから許せよ」
「どういう理屈………あーあっづい……密度増えた…余計あつい……」



一回ドアノブを捻っただけで我が家への堂々たる侵入を果たしてきた今日も真っ赤っかのキッドは、自分が何を言っても悪いことをしてるってのを自覚するべきなんだ
この熱い真夏日に蒸し暑く見させる真っ赤なヘアカラーが本当に目の毒
なんだこの人、どういう神経してんだろ



「アイスの一つぐらい手土産に持ってきてんだしょーなー」
「あ?んなモンあっかよ。換気扇貸せ」
「えー……またっすかー……」



俺ん家の小さいキッチンの隅にまで歩いてったキッドがズボンのポケットからおもむろに取り出したのは、シガーレットチョコとか煙が出るパチモンじゃなくて本物の煙草だ。
紐を引っ張られ、カラカラカラと回り出した換気扇に向けて吸い込んだ煙を吐き出している。自宅に換気扇がないキッドはこうやってたまにウチに寄って吸いに来るんだけど、全くもって意図が理解出来ないし、このあっつい夏の日にわざわざ俺のアパートにまで来て煙草だけ吸うってやっぱりどんな神経してるんだろ



「外で堂々と吸えない未成年サンは大変ですねー」
「…つーかナマエ テメェさっきから何敷いて寝転んでんだよ」
「え、これか? 冷却マット」
「んなモン買うぐらいなら玄関の鍵直せバッカ野郎!」



まあそれもそうなんだけどね。いやあでもやっぱり冷却マットの引力には抗えなかったわけですよ


青色で、マットの中に塩…?とか何かそう言う冷やしてくれる成分が入っててココに寝転ぶだけで冷ややかな冷たさを味わえるって言う偉大な代物だぞ。あっづいあっづい言ってはいるが、この冷却マットさんのお陰で正直そこまで暑くなかったりする。
「いいだろーすずしーぞー」と嫌味を含めてニヤニヤとキッドを笑ってると、勿論怒らせてしまったようで「脳天カチ割んぞテメェ」とかどこかの族みたいなクチ叩かれながら向かってこられた



「退け」
「は、なぜだし」
「おれもあっちぃーんだよ、冷やさせろ」
「無理ムリ これ見たとおり一人分の大きさしかないから」
「だから、テメェが退いておれが寝転べば足りんだろ」
「その発想がまずないわー  ちょ、やーめろってばかやろー」



「いいから退けって!」とジャイアンと同じくらいのジャイアニズム発揮してるこいつホントなんなの?この暑い日の暑い畳のとこに出るのさえ嫌なんだけど?グイグイと背中を押され、もうすでに横になり寝転ぶ気マンマンでいるキッドさんなんだこの人ほんとこわいわー




「……で、何故こんな形になった」
「テメェが退かねぇからだろーが」
「いや…何で真夏の冷却マットの上に男子高校生が引っ付きもっつきして寝転んでんのかって言う…絵面が……大体キッド、おまえな」
「あぁ、確かにひんやりすんなコレ」
「だろー!マジで冷やっこいから。夜もこの上で寝てっもん」
「これ中に何入ってんだ?」
「さあ、何か書いてた入れ物は棄てたしなー。つかキッド、息が煙草くせーよ。俺の鼻の真ん前で息すんなよー」
「………」
「寝んなー」




ああなにこれ超あついわー











「……二人とも、何故引っ付いて寝ているんだ……そしてキッドが壊したナマエの家の鍵はまだ直ってないのか…」





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