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▼ ブラハム

「具合はどうだい ブラハム」
「んー……いてーぞ…」
「嘘を吐け また起き上がってたんだろう。布団の乱れ方が不自然だ」
「…………」



あの麦わらの一味たちは、本当に気持ちのいい青海人だった。帰ってしまって少し名残惜しいが、彼らのお陰で空島を悩ませていた問題は終止符を打てた。神・エネルの恐怖に怯えることもなく、ワイパー、カマキリ、ラキ…そしてブラハムが無茶をすることもなくなったわけだ。 戦士カルガラに恥だと思われるかもしれないほど、ナマエは争いを好まない性格をしている。幼馴染のブラハムが常時不安になってしまうような細長い体をしているから戦うのが苦手、なのではなく純粋に戦いたくないと宣う。それがナマエと言う男のこと



村外れに建つブラハムの家に、替えの包帯を持ってやって来たナマエは家人を叱った
青海の剣士ロロノアに斬り付けられた胸の傷がまだ完全に癒えていないのに、ブラハムは起き上がって体を動かそうとする。どうもこの幼馴染は、どれ程の心配を絶賛与えているのかを分かっていないのだ







「良いから帽子を脱いで、もう一度横になりなって」



ブラハムの目元を覆い隠しているニット帽を奪い取る。あ!と非難めいた声が上がるが、一睨みしてやれば大人しくなった。

傷口は塞ぎかけてはいるが、まだまだジュクジュクと膿んでいるところもあって見ていられない。化膿止めの薬を町で貰ってきたから使え、と渡す。ほら、ちょっと腕を動かしたぐらいでそんなしかめっ面をするくせに。大人しくじってしておけば良いんだ



「いいかいブラハム 僕が夕食を持ってきた時にもベッドを抜け出していたら、スカイピア特産の唐辛子をたんまり仕込むからね」
「…分かった ちゃんと寝ておくから、そうドスの利いた目で睨んでくるなよ」



帽子の下の短い頭髪が少し汗ばんでいる。暑かったのだろうか。それはいけない
ナマエは椅子から立ち上がり、部屋の窓を開け放そうと視線を動かすと、丁度ドアが開いて外からワイパーが入って来た




「ナマエ、いんだろ」
「断定系かい? いるけどね」

「"栄養士のナマエ"を探して、エンジェル島から使者が来てる」
「えぇ… 今は断ってくれないか?ブラハムのことで手一杯なんだよ」
「おい、おれを理由に関係こじらせたりすんな」
「本当のことじゃないか」
「んならテメェで断って来い 来てんのはコニスって女だがな」
「コニスちゃんか!?あぁすぐ行く!」
「………おいナマエ」
「勘違いしないでくれよブラハム コニスちゃんから今夜の料理の材料を貰う手筈だったんだ。行ってくる!」



手に持っていた代わりの包帯をベッドの上のブラハムに投げつけて、自分が戻るまで留守番をしていて欲しいとワイパーに言い残し、ナマエは慌しく家を飛び出して行った。



「……アイツも、大概ワーカーホリックだな」
「…ワイパーからも何とか言ってやってくれよ。働きすぎなんだ、ナマエ」
「お前が言っても聞かないことでおれが役立つワケねぇだろ まァ精々早いとこ怪我治して、1つでもアイツの心配事を取り除いてやれ」
「………そーだなー…」




栄養が充分に取れなくて、他の子ども達より一回り体が小さかった子ども
剣や銃を見るだけで怖いと泣き出して袖を掴んで来た
それが、今じゃどうだ あんなに大きくなって、心配ばかりしていた自分を心配する側に回ったぞ




「つーか、お前の帽子ん下久しぶりに見た気がするな」
「……どうせおれは、ワイパー程彫りの深い顔してねーよ」
「ムクれんな鬱陶しい いいじゃねぇか。惚けた顔同士、お似合いだろ」
「………まさかそれはナマエとのこと指してんじゃ、」
「さて、おれは仕事に戻るとするか」
「ワイパー!!」




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