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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ ガープ

*副官主/片思い






確か、あの人の結婚式のお祝いには無難に花束を贈ったはずだ。
なのにあの人は「花なんぞ食えるか!」と頓珍漢なことを言い出してたっけ。違います、その花束は奥方様にですよと苦し紛れに言い訳してみれば、今度は「おれにはないのか!」って言う始末。いつもはそんなに物欲ないくせに、どうしてこんな場でばかりそんなことを…と思っていたが、恐らくあれは、あの人なりの照れ隠しだったのだろう。隣に立って微笑む奥方様は、あの人には勿体無いくらいの……いや、お似合いの綺麗な女性だった









「苦労することばかりなんだろ?」とよく言われるが、周りがそう思っているよりも現実はそうじゃない。割と手はかからない人なんだぞ、 ガープさんって
周囲のモノは壊す、食べられそうなものは手当たり次第に手を伸ばす、相手が誰だろうとガープ調子の一本調子 本部からの命令を聞かずに好き勝手し放題
…まあ、字面に起こしてみると「苦労してる」と思われるかもしれないが、このテンションに慣れているとそうも思わなくなれる。
新入りのコビーやヘルメッポや等兵たちは齷齪しているようだが、
俺のように長年ガープさんと連れ添った副官級の人間になると違うんだなぁ、これが



「ガープさん これ今週の始末書ですよー」
「…今週? おいナマエ、今週たぁ何じゃ今週とは。普通は今月、月単位に来るもんじゃろうが」
「来ることはもう承知してくれてたんですね。 貴方がそれはもうえっらい早いスピードで色んな事やらかすので月単位の処理じゃ処理がおっつかなくなりましたので、ガープさん特別に規則を捻じ曲げてもらいました」
「何じゃとおお!!」



煎餅食いながら吠えないでください。食べかすが雨あられと俺の顔に降り注いでいるじゃないですか。間を置かず内ポケットからハンカチを取り出してさっと拭う。そして再度始末書を押し付けた



「い、い、加、減に!しないと、その内お給金無くなっちゃいますぞ」
「ワハハハ!無くせるもんなら無くしてみぃ!その時ワシは人権を主張するぞ!」
「まあそう言う戯言はいいですから、早いとこサインを…」



「ガ、ガープ中将おお!たたた、大変です!」


「…あーもう嫌な予感しかしない」
「ナマエの勘は当たるから嫌じゃのう。参った参った」
「煎餅から口を放しなさい」
「あいたっ」




飛び込んで来た曹長になんだと声をかける。
返って来た返答は案の定センゴク元帥のお怒りの呼び出しだ。



「……先日、ガープさんが"孫の船を見かけたような気がする!"とか何とか言って船を予定針路から大幅にずらせた事への叱責でしょうねぇ」
「あーあれは結局ルフィじゃなかったしのぅ。詰まらん海賊たちじゃったわ!」
「そう言えば…以前お会い出来ましたが、俺もルフィ君を見たのは赤ん坊の時以来でしたね。いやあ大きくなってましたなぁルフィ君」
「うむうむ、ワシに似て良い顔つきの男になったもんじゃ」
「あぁ、そこは否定しませんね。哀れなくらい貴方の遺伝子を継いでました。奥方様要素が一欠けらも見つけられなかったのが未だに不思議です」

「ガープ中将!ナマエ准将! お話してる場合じゃないかと!」

「ああそうだった、センゴク元帥ですね。そうだそうだ」
「何じゃめんどくさい。無視しておけ」
「そうも行かんでしょう…。ほら早く立って、煎餅の袋は置いて!茶の包みも机に置く!」











始末書を提出するついでに、途中まで付いて行くことにした。あの人のいつも半歩斜め後ろ。これが自分の、"居て良い位置" あの人の隣は俺ではなく、奥方様のもの。
あの人が振り返る。出会って五十余年、全く変わらない笑顔の持ち主、と言うのも中々珍しい存在だ。
「さっきの部屋での会話じゃあないが…ナマエは昔から、ワシの嫁さんのようじゃったな」
「…あぁ、まあ確かにガープさんには"夫を立てる"ような接し方を取っていましたからね。全て計算済みの行動ですよ」
――ほうか!ナマエは計算高い男じゃのう!海軍にとってはピッタリの人材じゃろうて!
「まあ計算ずくじゃろうが何じゃろうが別に構わんわい。これからもしっかりと、ワシの後ろにおれよ」
「……………、…」


やはり何となく、君 には一生勝てないんだろうな、って、思った









(一生片恋慕)



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