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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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▼ ルフィ?

*副官主/再会









 遠征に出ていた新世界の海で予期せぬ出会いをしてしまった。

 正面からやって来る船首に見覚えがありすぎていたから、同伴していた部下たちへ「砲撃するのはまだ止せ」と言って止めておくのに苦労した。
徐々に近付いて来る船――海賊船は、此方が海軍の船であると知っていながらも迂回をしない。一隻だけだから舐められているのかも知れないが、



「……やはり君の船か、ルフィ君」
「あっ、じーちゃんの副官!」
「ナマエだよ、ルフィ君」
「ナマエ!」
「そうそう」



案の定、麦わらの一味の船だ。橙色の獅子型船首飾りは、前に一度ウォーターセブンで見ていた。

 その船首の上に座っていたルフィ君は「何か見覚えある奴が乗ってるなーと思って見てたんだ!」と上機嫌
やれやれ、曲がりなりにも海軍と海賊の関係なのだが、笑っている彼にはあまり気になる事じゃないようだ。そんな所もガープさんにそっくりで微笑ましくなる。


 制止命令をかけている背後の部下たちから「ナマエ殿、攻撃に移らないのですか」と問われるが首を振って否定する。
「我々はただの連絡船だ。満足な設備を要していない今、彼らに勝てると思うか?」
「なら応援を…」
「止そう。寄り道をしていたと怒られるのは我々だ。ガープさんの責任として擦り付けておこうじゃないか」
「はぁ…」
イマイチ釈然としていない様子だが、部下は大人しく引き下がる。連絡船に乗る我々には積極的な交戦義務は生じない。それに、相手はガープさんの孫のルフィ君だ。一海軍としてはやってはいけないことをしているのかもだが、一人の人間としてならなるべく戦いたくない子だ



「あれ、じいちゃんはいねぇのか?」
「いないよ。今は俺が遠征に出ているからね」
「遠征? じいちゃんの副官なのに?」
「副官だからと言って、四六時中あの人の傍にはいないんだ」
「ふーん」



ま、じいちゃんが居ないなら良かった!
 とルフィ君は安堵の息を吐いた。思わず笑ってしまう。二年前に会った時と変わっていない人柄にだ。
一時麦わらの一味の死亡説が流れていた時は、ガープさんも笑い飛ばしながらも心配していたから改めて無事を確認できて安心する。

もう少しだけ世間話をしていたかったが、にこにこ笑顔のルフィ君の後ろから現れたオレンジの髪の女の子――確か泥棒猫が、何事か叱りつけている。そしてその甲板の奥に、目を見張る人物の姿を見つけた。(……トラファルガー・ローだ)今朝の新聞に書かれていた同盟の件は本当だったらしい。今自分に課せられている任務の1つに彼が関係しているのだが、ここは気付かないフリをして泳がすべきだろうか。



「……ごめんねルフィ君 引き止めてしまったかな?」
「ん? あー……」
「…何処かへ向かうところだったか」



ルフィ君達が向かっている方向は確か、あの王国が……。

いや、詮索はやめておこう。
今の俺たちには七武海関連の封書を届けると言う義務がある。
それに、今自分がどうこうしなくとも、恐らく彼らの向かう目的地に同胞は駆けつける。それが早いか遅いかの問題だ。



「…それじゃあ元気でな、ルフィ君」
「おう!じーちゃんによろしく!」
「ああ、もちろんだよ」



ルフィ君達の船に道を譲る。オレンジの船首と、麦わら髑髏の旗印が見えなくなるまでその船尾を見送った。

最後まで恨みがましい目で彼らを見送っていた部下のやる気満々な様子には感心してしまう。そんなに気負わなくとも良いことだと言うのに…



「……ナマエ殿、やはりガープ殿の影響を受けてらっしゃいますね」
「そうか?………そうか??」
「そうですよ全く…。これがサカズキ元帥に知られでもしたら…」
「まあそうなったらガープさんに助け舟を出して貰おう。 それに、元帥は今忙しいからな…こんな連絡船の処遇1つにいちいち取り合わないさ」



さあ行こう、早く届けて、早く帰ろう。きっとあの人がまた問題を起こしてらっしゃる頃だろうから







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