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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▼ ルッチ

*金持ち主/片思い






「仕様もない」と、俺の愛を一蹴にしてしまうのがこのルッチさんだ。
仕様もないとは即ちしょうもない、である。しょうもないとは、ばかばかしい・くだらない・価値の無い、ものを表現する際に用いる言葉だ。
よって、ルッチからしてみれば俺がルッチに抱いているこの愛情は、"無価値"なものだと言うことだ。泣きはしない。ちょっとハートがブロークされたぐらいのダメージだ。


でもそれって人間的に言えば結構な重傷です




「そ、――っすか」

「ああそうだ。くだらん 同じ政府の人間として、お前のような男がいるなど恥ずべき事だ」



まったく、言ってくれるぜこの仔猫ちゃんは、と精一杯強がってみる。





――ナマエは道楽な金持ち夫婦の一人息子として育った。
言わば甘やかされ愛され大切に育てられて来たのだ。
金で買える欲しいものは全部与えてくれた。面倒くさくてしたくなかったことは全部メイドの者達がやっておいてくれた。望めば友人だって出来た。じいやたちが厳選に厳選を重ねて連れて来てくれた同年代の者達はとても良い"友人らしい"友人だった。
全てを"用意"されていたナマエが甘ちゃんな男になるのは当然だった。
悪魔の実が欲しかった。だって珍しいものだから。金で買おうと思えば、父さんなら買えるんだろう?なら買ってくれ。食べてみたいんだよ。ああ、出来たら強い能力のが良い。え?味は不味い?なら料理長、お前のこれまでの人生で培ってきた料理人スキルを全駆使して美味しいスイーツに仕立て上げろ。最初の一口目がもし俺の口に合わなかった場合、路頭に迷うことも危惧しておけよ?――まあ結局、悪魔の実は手に入れられなかったわけだが。流通されれば幾らでも金を積めるのだが、悪魔の実の流通は難しい。闇市に売りに出される前に業者が悪魔の実を欲する者に襲われたりしてしまうのが常なようだ。



元々海軍等政府へ多額の支援金をしていた家だった為にエニエスロビーの面々とも面識が大なり小なりあった。
顔を合わせば苦虫を噛み潰したような表情で露骨に嫌悪を表すのに極力失礼のないように妙な敬語で話しかけてくるジャブラがいた。最低限の会釈と言葉、礼節を保ち接してくるブルーノがいた。ご機嫌取りを命じられて自身の口を触らせていたフクロウがいた。
その中でも唯一、ルッチだけは他と一線を期していた


礼儀を弁えていても、どこかで人を小馬鹿にしてくる。
そんなルッチの 他者がナマエにしてこなかったような態度が気になった


だから欲しかった。 ルッチが ルッチからの愛が
金を何億と積み上げても靡きそうにない、この男が自分への関心を示して貰いたいのだ



「…と言うかだなルッチ もう俺に敬語も使わなくなったな。別に良いけど」

「使うに値しない人間と判断させてもらった。以後の見解の認識は改められないと思え」

「……相変わらず手酷いと言うか…」

「お前はそれに相応するだけの人間と言うことだ」



これこそ正に、血統書付きの気位の高い猫のようではないか

と言えばルッチは無言で怒気を露わにするだろう。それぐらいの察しは付く程度の付き合いだ。一時のブレもなく嫌われ続けてはいるだろうが、ルッチが"用意された仮初の友人"ではないことがとても有り難い。
それに、こうして会話には付き合ってくれる。これは余程の幸福ではないだろうか



「……金ならルッチが望むだけやるんだが」

「最低の口説き文句だと知った上でその発言か? 人間性が問われるな。ヒエラルキーの上位側に住んでいるくせに、人間的に底辺の男め」

「ぐぐぐ……俄然欲しいなルッチお前が 余計に燃えてくるぞ」

「………今 自分に置かれている立場に感謝しろ。もしお前が何の立場もない男ならば殺しているところだ」



ナマエが、ナマエの家が、少しでも失脚さえすれば
ルッチは有限実行とナマエの寝首を掻きに来るだろう


本当に、恐ろしい猫だ


故に、欲しくなる どうしても




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