とうらぶ | ナノ
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君が知らなくても地球はまわる


吐いて棄てるほどいる審神者の内の、更に下の下の下の位置に在籍している底辺審神者。それがおれ、通称ポンコツ、俗称役立たず、自称息するゴミ である。

ただのゴミ野郎なのに霊力を持っていてすまない。ほんのちょっとだけ保有してて心底すまない。どうせならゼロが良かった。何も持っていたくなかった。普通に恙なく人生を送りたかった。これはおれが一本丸を与えられてからも常々考えていることだ。
雀の涙程度の霊力しか持っていないおれに本丸を分け与えるとはいよいよ政府もトチ狂ったか? けれどそれだけ事態に切迫しているのだと言われるとうなずける。
どちらにせよゴミはゴミらしく、廃棄処分されるまでは尽力しなければならないわけで。
せめて畑に蒔く糞の肥料程度ぐらいには役立ったなと思われる程度にはなりたいわけで。

ああでも結局おれの存在は糞以下だし他の審神者の皆さんとの実力差は離される一方だしどうせおれみたいなゴミが率いる本丸が歴史修正主義者討伐とかの功績を挙げられるわけもないしいつ本丸解体を言い渡されるかも知れないし何なら役立たずは死ねって言い渡されるかもだしいやそれよりももっと身近にいる者達に絶望されて謀反とか起こされる可能性だって無きにしも非ずなわけで、






「 ――ああ!! もう! また君はこんなところでジメジメしてたね!お天道様も高いっていうのに蔵裏で腐ってないでおいで!お昼にするよ!」



「あああああやだ!やめて引っ張らないでください光忠サン!!お天道様だっておれみたいなゴミクズ野郎に浴びせる日光が勿体無いって思ってるって!日光はいつも眩しい光忠さんが浴びてればいいって!」

「なにワケの分からないこと言ってるの! いっっっつも僕言ってるけど、君のそういう根暗なところ本当にカッコよくない!僕の主なんだからジメジメしないで!」


小奇麗で整った顔がすぐ眼前に! ああ本当いつものことながら輝きまくってますねおれの初鍛刀さん!

正直なんでおれみたいなげっそり系低出力審神者の初鍛刀で燭台切光忠が出てきたのかが不明すぎて怖い。審神者が行う初鍛刀の一般的な結果は短刀とか脇差だってこんのすけから聞いていたのに。

眩しかった。ご降臨あそばされた時に放出されてた光忠さんのイケメンデキる男オーラにおれ光の中に消え去るかと思った。しかも光忠さん見た目がオラオラ過ぎてビクビクしてたんだけど実際は世話焼きオカン気質のパワフル系刀剣だったので二重にすまないしたくなった。ごめんなさい、ごめんなさい、おれみたいなゴミの面倒を甲斐甲斐しく看てくれそうな刀剣を都合よく最初に出しちゃって本当にごめんなさい狙ってないんですあなたに世話されようなんて微塵も思ってなかったんです



「すまない……本当に…光忠さんにはもっと上の位の本丸に回して楽をさせてあげたかった……すまない…おれの霊力不足で初日に満足に手入れしてあげられなくてやけに時間かかってすまない……」

「…あのね、またその話を持ち出すの? 僕はあんなの全く気にしてないし、いつまでも謝ることじゃないよ。  それに、僕を他の本丸に回してあげたいだなんて、冗談でも言ってほしくないなぁ。 僕は此処を気に入ってるよ。君の力になりたいって、本気で思ってる。何でもちゃんとカッコ良くこなしてみせるから、もっと僕のことを信頼してくれていいんだよ?」




これだもの



「すまないすまないすまない本当にすまないごめんごめんごめん本当にごめんおれってほんとクソやろうです」

「えっ!? ちょっと、どうしてそんな高速謝罪するのさ!」



お願いだからおれに触れてこないでいただきたい。そうされるとおれは更にバカになる。身悶えするほど息苦しくなって、呼吸するのが辛い。燭台の灯りのような瞳に今この瞬間も見つめられているんだと思うとあらゆる箇所が焼けているのではと言うくらい熱い。ありえないほど動悸がするし、たぶん、おれは殺される


光忠に、心臓を こわされる



これは一種の『刷り込み』なんだと。
生きてきてから初めて、他人と共同生活を送り、他人に気遣われ、他人に思いやられる。

『これが好きなんだね、じゃあ明日作ってみるよ』なんて言われ。
『お疲れみたいだからお風呂沸かしといたよ』と言われ。
『勝って来たよ主クン。はいこれ手土産だよ』なんて言われ。
『君の力になりたい』 なんて、



誰にも優しくされずに生きて来た人間が、優しくされてなんか見ろ、そんなの



「…………生きてるのがつらい」


「また君はそーいうこと言って、もう!」



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