とうらぶ | ナノ
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きゅう こんだとおもってくれてかまわない


「  どういう事なのかキッチリと説明してください!!」


近代的デザインのビル群に囲まれたお洒落なテラスカフェの一席に、灰色の髪に紫色の眼を持つ大変見目麗しい男性が相席の男に食ってかかるように詰め寄った。
喧嘩をしている様子はない。何故なら男の顔は耳まで真っ赤であり、真向かいでコーヒーを飲み干している男もまた笑っていたからである。


「おいおい、俺はちゃんと『待っていろ』と言っただろう?聞いてなかったのか?」

「勿論聞いておりましたがそうではありません! もっと根本的な説明をお願いします!!」

「んーまあそうだなぁ、ここのカフェの客も道行く人々も知る由もないだろうが、俺は一応この世界を救った英雄だから、」


政府が褒美を与えると言ってたんで、お前を所望しただけだぞ。


国宝ガー、文化遺産ガー、と反論されたけど、必殺・「終わった後の人生は俺の自由にさせてくれる、バックアップするって言いましたよね?」発動
所有権だの何だのをお上に書き換えてもらって、白昼堂々博物館に突撃。
博物館の一番の集客スペースに鎮座していた展示ケースの前で呼びかける。

「――迎えに来たぞ、"へし切長谷部"












 と、まあそんな感じだな」

「で、では、何故俺はまた人の形をしているのでしょうか…」

「折角これからまた二人で一緒に暮らすようになるのに、片方が刀じゃあ不自由だろ? いや、俺はまあ刀のままのお前でも愛せる自信があるけど」



「主……!!」

「お、惚れ直しちゃったか〜?」


ここが往来の場所である事を 二人はすっかり忘れていたので、衝動の赴くままに抱きついた。一気に衆目が一箇所に集まる。しかし二人は気付いていないのだ、めでたいことに。


「嬉しい、幸せ、幸せです主、俺は…俺はもう、お傍を離れなくても良いんですよね!」

「ああ、そうだよ長谷部」



刀は、それはそれは幸せそうに笑った。








人の一生は短い。けれど、この『束の間』が永くあるようにと、願わくば彼の人生の全てに寄り添えたらと、尽きぬ願いと祈りで彼の幸福は満たされて行く。



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