退室して、部屋の外で待っていたこんのすけがピョンっと肩に乗って来る。
他の人間の前ではダンマリなこんのすけは揺ら揺らと尻尾を揺らして俺を見ていた。きっと、話し声は聞こえていたことだろう。
「どうしような」
つい、そんなことを口にしてしまったが、こんのすけは何も言わなかった。
全員が一同に介する機会はやはり夕食の席だろうと言うことで、
本丸帰還前に今日の炊事当番である歌仙、光忠、蜻蛉切に専用の端末を使って
「今から帰るから、帰ったらすぐ夕飯に出来るような感じで飯を作っといてくれ」と頼んだら烈火のごとく心配された。
『本当に、ふっつーーーにご飯作っててもいいの!?』と光忠が慌てていたがそれこそ何でだとこっちが訊きたいくらいである。
「飯は大事だろう、もしかすれば今日の夕飯が本丸での最後の晩餐になるかも知れない」
そう伝えたら電話の相手が光忠から歌仙に代わった。
光忠は泣き崩れたのだと言う。応答している歌仙も涙声だった。鼻水を啜る音が雅じゃない。
『うるさいよ主!!』
「ナチュラルに俺の心の声を読み取るさすが俺の初期刀くん」
『うっ…あの、さ、ほ、本当に、…ほ、本丸、解体され、 ぐっ!』
「えっ? お、おい歌仙!?」
『あ、主殿……わ、私が、代わりまし……う、うぅ…』
「と、蜻蛉切ー!?」
しまった。炊事場から大の男三人の泣き声しか聞こえなくなっている。
相当カオスな絵面になってやしないか心配だ、早く帰ろう、あれ、俺も鼻水でてる。まったくみやびじゃない
「………これはどういう状況なんだ」
炊事場から鼻を啜る声が聞こえると教えられて様子を見に来て見れば、何故燭台切も歌仙も蜻蛉切、揃いも揃って膝を突き合わせている。炊事場で馴れ合っている場合か。
「夕餉の支度はどうした!主がお帰りになった際に空腹でいらしたらどう申し開きを……」
「た、怠慢マン君……!」
「誰が怠慢マンだ燭台切」
「あ、主から今電話があったのさ……」
「なに!? 主から? な、何を仰られていたんだ!」
「それは………グスッ」
「おい泣かないで教えんか!」
じきに俺も涙ぐむことになった
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