とうらぶ | ナノ
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「#幼馴染」のBL小説を読む
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さん そがたりない


現代に戻って来た目的を 危うく忘れそうになってしまった。

俺が単独で現代に事のあらましを聞きに帰還することを想定していたかのような対応の早さだったのだ。

まず政府機関の中で一番偉いお人のいる部屋にまで通され、これまでの全てを労われた。
矢継ぎ早に貰った言葉の中で一番多かったのは「ありがとう」だったが、正直このお人にお礼を言われてもいまいちピンとは来ない。そう、やはり今の俺には「実感」が足りていないと理解する。
労いの言葉が途切れた間を狙って何とか「本当に敵は全ていなくなったのですか」と訊けた。返ってきたのは「勿論だ」という力強い返答だった。



「本日00時から以降、この世界に歴史修正主義者の跋扈を逸早く発見するために設置された約12億個ワールドネットワークセンサーのどれにも、奴らの存在を探知しなかった。毎日山のように上げられた修正被害の報告も上がって来ない。 勝ったのだよ、我々…いや、君はね。歴史を改竄しようとした不届き者、悪、怨敵をな」


「はあ」


戸口に控えていた秘書らしき人間にゴホンと咳払いをされて、今自分が気のない返事をしたのだと気付いた。 実感、実感、 あの、実感って、こういうものだったっけ。


「…あの、歴史修正主義者たちがこの世界からいなくなったことは理解しました。それで……その…これから我々は如何すればいいのでしょうか」

「? どう、とは」

「え? いや、だから俺と、本丸にいる刀剣たちの今後の処遇は…」


わらわれた。「ハッ」と乾いた笑みと、目尻を下げた二つの眼がからかうように俺を見る。


「君の今後など薔薇色と言っても過言ではない人生になるだろうさ。政府としては望むまま報酬を与えても構わないと考えているとも。なんせ、君は歴史の立役者だ。英雄だ。これより先は好きに、自由に生きていい。」



「自由に生きていい」と言った直後に「我々も出来る限り君の人生をバックアップするつもりだから」と来た。



………なるほどな?




「それで刀剣のことだがね」

 来た

「彼らは勿論、元の刀の姿に戻ってもらうとも。現存組は本来所定されている安置所へ、過去のデータから復元利用した組は元の無に帰す、ただそれだけのことではないか。違うかい?」

「…………」




 ああ、胃が痛んできた。これを、本丸に帰って、お前の口から伝えろと言っているのだ。

本丸できっと、戦いが終わった後の自分たちの処遇を不安げに心配しているあいつらに、主の俺自らが伝えなければならないと。
俺は、上手く返事が出来ていただろうか。ここから後のことはあまり覚えていない。多分、どうにかして部屋から退出した。ともかく、帰ろうと、思った。本丸に、あいつらの許に









フッと脳裏に お前の姿が過る。
そんな泣きそうな顔をするな。お前の悲しげな顔は、俺が辛い   


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