「残念だったねえ」
「黙れ」
「てっきり、いつもみたいに自分もお供させてもらえると思ってたのにね」
黙れと言ったのにも関わらず要らぬ口を叩いた青江は、獅子王が折って俺が斬り捨てた伝書の片づけを手伝わずにぼうっと中庭で繰り広げられている混乱の有様を見ていた。手伝え、と言っても「手に肉刺が出来ちゃってて」などとほざく。もういい。
「戦いが 終わったんだってさ」
緊迫感の欠片もないような声だ。声音と口にしている内容がここまで合致しないのも不思議な。
無視してもよかったが、それについてはどうしても自分の考えを口に出しておきたかった。
「 それは"政府"とやらが言っているだけだ。俺は、主が口にされるお言葉しか信用せん」
「だよねぇ。僕もだよ」
中庭から爆音。「あー、和泉守クンと陸奥守クンがー」 髪を引っ張り、服を引っ張り、額を突き合わせぎゃいぎゃいとした言葉の応酬、ああいつものことだ、「放っておけ」
太刀や一部の打刀連中は今回の報を聞いて、殆どが受け入れ渋っているようだった。
不安だから主の帰りをとりあえず待っていよう、といつものように大人しくしている短刀
報を受け入れ、その先のことを慮っている連中も、いる。
「本当に戦いが終わったって言うなら、」
「僕ら、どうなるのかな」
―――――、
そんなこと、分かりきっている。
「元の刀に、戻るだけだろう」
左胸が僅かに軋むんだような気がした。
主、これは一体、どういうことなのでしょう。俺には、分かりません。
prev / next