とうらぶ | ナノ
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これ以上は背負えない


「僕、畑仕事には、自信が ありますっ」

初対面時のオドオドとした印象から一転、自信ありげに、今日の内番発表前に自ら申し出た五虎退は主からの許可を得ると、同じく畑当番に当たった獅子王と共に畑の方へと駆けて行った。



「だからと言って何で獅子王はどうでもいい事を五虎退に教えたんだ」


縁側に座っている俺の肩の上には、獅子王が置いて行った鵺、そして膝の上には、獅子王がそこに置いて行くように教えた五虎退の虎たちが寝転がっている。審神者のお膝元は、物置ではない。置いて行く際に若干の遠慮を見せていた五虎退が、まさかきちんと先達の真似をするとは思わなくて身動きが取れなかった自分が悪いのか、と首を捻る。




「 やあ、主。小さな仔たちに大人気なようだね」
「お裾分けをしてやろうか?石切丸」
「では虎の子を預かろうかな」


あ、意外にずるいぞ石切丸。軽い虎の仔を選んで持って行きやがった。
依然として肩に乗っかっているこの鵺、思ってた以上に重い。四十肩の気配がある俺の肩には少し厳しいものがある。
それを石切丸に訴えると、「そうだね、鵺以外のモノも乗っているようだし。祓ってあげようか?」と言われた。なにそれこわいやめて。心なしか肩が一ミリ下がったような気がしたんだがきっと気のせい。



「……楽しそうに畑当番やってるみたいで何よりだな」
「ん? …ああ、五虎退君たちを見ていたんだね、ここで」
「そーだよ。 うし、上手くやってることも確認できたし、俺は小狐丸と一緒に昼餉の準備をして来るか」
「私は内番を任されていないけれど、何をすれば良いのかな?」
「あ、伝え忘れてた。石切丸には午後から、御手杵と一緒に3時間の遠征任務に行ってもらう予定だから。しっかり腹ごなししといてくれ」
「御手杵君と遠征だね、分かった」


にこやかな笑顔で了承してくれたことに内心ホッとした。
立ち上がって、ついでに残りの虎を預かってもらう。鵺は…仕方ないから獅子王の部屋に置いて来ることにしよう。
「ああそうだ、主」
立ち去りかけた俺に石切丸が声をかける。「どうした?」



「君の双肩が背負っている"ソレ"、本当に祓ってあげようか?」



―――暗い安置所
―――顔の見えない真っ黒な人間たち
―――迫り来る死の瞬間からの逃避
―――神様に気に入られた男
―――神隠し



「……いや、いいよ。やんなくて」
「…そうかい?遠慮はしなくても…」
「遠慮じゃない。…祓えたら、帰れるものでもないだろうしな」
「?」
「あー、いや。こっちの話だ。悪いな、石切丸」
「構わないよ」



 帰れるものなら帰りたいさ。けどそんな事、とっくの昔に諦めてんだよ


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